発達障害児と子どもたちとの関わり~2歳児の育ち~


保育園で発達が気になる子、支援を必要とする子など、集団生活の中では特別に配慮が必要です。

しかし、子ども同士の集団活動であるからこそ、「特別な配慮」は、子どもたち自身がその発達障害の子を「特別ではないお友達」として受け入れることで大きく変わっていきます。

 

2歳児クラスの中に発達の遅れているY君がいます。

歩き方も引きずったように一歩一歩ゆっくりでしか歩けません。

手足の動きがおぼつかなく、身体的バランスがうまく取れませんが、自分自身でコントロールしているようでマイペースで歩いています。

 

性格はとっても明るく天真爛漫。

いつもニコニコ笑っています。

においには特に敏感。

花が大好きでいつも鼻を近づけてクンクンとにおいを嗅いでは「いいにおいするね」と、とっても嬉しそうです。

保育室に飾っている花瓶の花も「この花ちょうだい」といい、1輪とってあげるとそれを大事そうに1日中ずっと鼻の前にかざしていい気持ちになっています。

 

散歩に行った時もそうです。

Y君のペースに合わせてみんなでゆっくり歩きます。

途中で道端に咲く花をみて、Y君は立ち止まり、その花から離れません。

においを嗅ぎ、「いいにおいするねぇ」といつものようにうっとり。

歩いていた子供たちも気になり始め、足を止め、その花に見入ります。

「あ、蜜のにおいがするかも!」

「テントウムシがとまってる!」

「だんご虫も歩いてる!」

と、とってもにぎやかな展開になることもしばしば。

Y君と一緒に笑っている子供たちを見てとてもほほえましくなり、途中で「散歩遊び」をして帰ってくるということも多くなりました。

 

ある日、わたしが「今日も散歩へいこうね、玄関で靴を履いて待っててね」といい、外で人数確認をしていると、Y君とお友達のS君がいません。

慌てて玄関に入ってみると、

「あのね、Y君が靴、はけないんだって。僕が手伝ってあげているの。」

S君がY君に一生懸命靴を履かせてあげています。

Y君は足を投げ出し、S君をみてニコニコ笑っています。

「お友達にかまってもらっている」

「助けてもらっている」

Y君は大満足そうでした。

 

食後はいつも、Y君の手先の訓練を兼ねて、みんなで“紐とおし”をしています。

長いひもに穴の開いたプラスチック製のおもちゃを通し、つなげていくのですが、私は主にY君のそばで声かけをします。

「もうちょっとだよ、がんばれ!」

「上手にできた!よかったね。」

一生懸命励ます私を見て、一言。

「せ、ん、せ、い、も、し、て、み、た、ら!」

この言葉には驚くやら笑えるやら。

なんとも楽しい紐とおしの時間です。

 

そのうち、子供たちの方からY君に声かけます。

「Y君、ここを持ってね。ゆっくりゆっくり、この穴の中にいれるんだよ。」

「もう少しだよ、もうちょっと、もうちょっと。」

Y君を囲み、楽しそうにおしゃべりをする子供たち。

Y君も簡単な言葉なら話せます。

お友達の顔を見合わせて、「お、も、し、ろ、い、ね!」と一言。

とっても嬉しそうなY君です。

 

さあ、運動会も近くなってきました。

種目は「かけっこ」です。

Y君は、練習の時から一番最後をゆっくりゆっくり自分のペースで走っています。

お友達から「がんばれY君!」と拍手と声援を受けながら、ニコニコ笑って愛嬌を振りまいて走っています。

そして、運動会の日。

いよいよ本番です。

いつものように最後を一歩ずつ確実にゆっくり走っているY君。

前を走っていたS君。

とっても大きな差が出ています。

すると突然、S君が振り返り、Y君のところに行き、手を取って一緒に走り始めたのです。

Y君とS君はニコニコ笑いながら、2人でゴールテープを切りました。

 

この瞬間、誰もが、思いがけない子供のとっさの判断に驚きと歓声があがりました。

いえ、とっさの判断ではなく、子供の素直な表現なのでしょうね。

“差し伸べた手の温かさ”

“その子供のキラリ光る感性のすばらしさ”

「僕を大切にしてくれる友達みんなありがとう!」

Y君の言葉が聞こえてくるようです。

 

Y君に優しいまなざしをみんなが向けたことで、Y君もその周りの子供たちも生き生きと変わっていく姿をみることができました。

発達に障害のある子を「障害児」として、クラスの中で特別視するのではなく、みんな友達だよ、と一緒に手を取り合う仲間づくりが大切です。

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