最近話題になっている異年齢保育。保育士として働いているみなさんは必ずどこかで一度は聞いたことがありますよね。
ですが、実際に異年齢保育を実施している保育園で働いたことのない方々にとっては、どんなものであるのかあまりイメージしにくいかもしれませんね。
異年齢保育のやりがいって?異年齢保育を行うときの注意点は?
そんな疑問にお答えするべく、今回は保育士さんから見た異年齢保育の魅力と異年齢保育を行う上での注意点をご紹介します。
目次
1.異年齢保育とは
異年齢保育とはその名の通り、異なる年齢の子どもたちを一定の割合で配分・クラス編成して行う保育のことです。
異年齢保育という他にも、混合保育や縦割り保育などと呼ばれている場合もあります。
園の保育理念や方針によって意識的に異年齢保育を取り入れている保育園もあれば、子どもたちの人数が少なく、結果として異年齢保育の時間が大半を占めている保育園もあります。
また、保育園によって異年齢保育への取り組み方も異なります。
普段の保育は同年齢の集団で行うが、朝の集会やお昼、午睡の時間など一日の中で一部の時間帯は異年齢保育を行うという園。
毎月の中で一日、異年齢保育の日を設ける園。
0歳から2歳までは同年齢クラスでの保育を行い、3歳以降から異年齢保育へと移行する園。
保育園の数だけ、異年齢保育への取り組み方もあるということですね。
異年齢保育を行う意義については以下の二点が挙げられます。
ひとつは異年齢の子ども同士の関わりが増えること。
最近では少子化の影響もあって一人っ子の子どもが増えてきています。
家庭内も含めて異年齢の子ども同士で集まる機会が少なくなっている今、異年齢保育を行う保育園は子どもたちの成長を促す良い機会を設けているといえます。
もうひとつは同年齢保育では生まれない子ども同士の関係性が子どもたちの成長を促すこと。
年齢別の保育においては子ども同士の関係は横並びで、何をするにしても「できる・できない」というような競争・比較的な面が捉えられがちになります。
異年齢保育のように自分より年上・年下の子と触れ合うことは、「できる・できない」というように競争的に相手を感じるのではなく、相手が自分と違うということを受け入れるようになります。
お互いに違う年齢の人とかかわる力を育んでいき、子どもたちは成長していくのですね。
2.異年齢保育の魅力
異年齢保育が何なのか、様子が見えたところで、ここでは保育士さんが感じる異年齢保育のやりがいや魅力をお伝えしていきます。
2-1.子どもたちの普段見られない姿を見ることができる
同年齢の集団と保育士との関係は、保育士が子どもたちの先頭に立ってものごとを教え、子ども同士のかかわりを調整する姿が多く見られます。
異年齢保育では、この保育士の役割を年長児が担ってくれることがあります。
例えば、3歳児の子どもたちのぶつかりあいやけんかの場面に遭遇したとき、保育士が仲裁に入るところを、年長児が代わりに仲裁に入り、それほど深刻にならずに済んだというお話を聞いたことがありました。
このように、年齢別保育では見られなかっただろう子どもたちの多様な面が捉えられ、保育を楽しめるということがやりがいの一つとして挙げられます。
2-2.子どもたちにとっては社会性や協調性を学ぶ機会となる
異年齢保育では、どの子も年上・年下といった立場の違いを体験できることが魅力の一つとして挙げられます。このような立場の違いが、小さい子を可愛がったりリーダー性を発揮したりという行動を引き出しやすくします。
年少の子どもは年長の子どもの遊びなどの様子を見て学び、年長は年少の子どもの世話をすることで自信を持ったり思いやりの心を育てたりします。
子どもたちにとってお互いの存在は身近にいる中で刺激を与えあう良い存在となっているのです。
実際に異年齢保育をしている保育士さんのお話が気になる方は、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。
『異年齢保育のいいところ』
『5歳児がみんなのヒーローになる‼ 〜保育園の異年齢交流のすすめ〜』
3.異年齢保育を行う上での注意点
魅力ややりがいを感じられる異年齢保育ですが、やはりその分注意することもあります。
ここでは、異年齢保育を行う上で保育士が気をつけるべき点をご紹介します。
3-1.安全に気を配る
いくら年長の子が年少の子をお世話するといっても、年齢は1~2歳ほどしか変わりません。
子ども本人がやる気いっぱいで自信があったとしても、いつもより危険が伴うという事を強く意識して保育に当たる必要があります。
3-2.子どもたちへの働きかけに注意する
異年齢の集団で保育を行う際、年長の子どもにとっては保育の内容や行動が年少の子ども向けになっているため、つまらなく感じることもあるようです。
放っておくと、同年齢で固まってしまったり年長児だけで遊んでいる…なんてこともあるとか。
年長児に対して、助けを必要としている年少児へのお手伝いを頼むなど、異年齢の子ども同士がかかわりを持てるよう、またかかわりを楽しめるように保育士が働きかけることも重要です。
3-3.しっかりとした指導計画を策定する
異年齢保育を実践するうえで、子どもたちの発達に関する深い知識と、同年齢保育とは異なる独自の指導計画を策定する必要があります。
実際に異年齢保育を実践し子どもたちの様子を観察していく中で、計画を見直したり再調整したりする姿勢が求められます。
異年齢保育には担当する先生の能力が要求され、その分負担も大きいものでもあります。
他の先生方もサポートをしながら、園全体で一丸となって子どもの成長を見守るという姿勢が求められますね。
4.異年齢保育におすすめの遊び
異年齢保育を行う際に意外と悩んだりすることが多いのが、どんな遊びをしたらいいか。
年少児のレベルに合わせると年長児が物足りなさを感じることがあります。
ここでもやはり、年長児がつまらなさを感じずに済むよう、年少児とのかかわり方をサポートしたり声掛けが重要になってきます。
ここでは、年少児から年長児まで楽しめる遊びをご紹介します。
4-1.しっぽとりゲーム
用意するもの:しっぽになるもの(縄跳び、紙テープ、ひもなどを人数分)
1、年少さん、年長さんでペアをつくる。
2、年少さんのズボンにしっぽの先を入れる。
3、走り回っていい範囲(枠)を決める。
4、「よーいスタート!」で自由に走り回り、年長さんはペアになっている年少さんのしっぽを取られないように気をつけながら、他のペアのしっぽを取る。
5、しっぽを取られたペアは枠の外に出る。
6、ある程度の時間で区切り、一番多くのしっぽを持っていたペアの勝ち!
ポイント
・しっぽを取られたら枠の外に出ること、しっぽをズボンの中に入れすぎないこと、枠の外に出ないこと、など約束事をあらかじめみんなで決めておく。
・年長児へは年少児が転んだり怪我をしないよう気をつけてみてあげることを声掛けするとよい。
・友だちと遊ぶゲームの面白さ、取られて悔しい気持ち、もう一回やりたい!という意欲など、子どもたちのいろいろな気持ちを大切にしながら、様子を見て何度か繰り返してもおもしろい。
・ルールは子どもたちの様子に合わせて変え、最後までしっぽを取られずに残った人の勝ちでもよいし、2、3回戦行い、全部の回の中で一番多くのしっぽを取った人の勝ちなどルールを変えてもさらに楽しめる。
4-2.じゃんけん列車
1、 年長児と年少児でペアをつくる。(年少児は前に、年長児は後ろに)
2、音楽を流して、その音楽に合わせて室内を自由に歩き回る。(音楽はピアノで園児が歩きやすい曲を弾くか、コンポで曲を流す)
3、音楽が止まったら、近くにいるペアとじゃんけんをする。
4、じゃんけんに負けたペアは勝ったペアの後ろにくっつき、一つのグループになる。(年長児は後ろに来た年少児と手をつなぐなどして離れないようにする)
5、2~4を繰り返し、最後に一番長い列の先頭に立っているペアが勝ち!
ポイント
・走ったり早歩きをしたりすると年少児が転んでしまう恐れがあるため、必ず歩くなど、約束事を決めておく。
・年少児はまだじゃんけんを理解しきれていない子もいるため、年長児が年少児にじゃんけんを教えてあげるよう声掛けを行うとよい。
4-3.椅子取りゲーム
1、年長児が椅子代わりとなり、円になる。
2、通常のルールで音楽を流し、年少児が椅子取りゲームを行う。
3、音楽が止まったら年少児は年長児に向かって座りに行く。年長児は年少児が来たら抱っこしてあげる。
4、最後まで残った年少児の勝ち!
ポイント
・子ども同士の触れ合いができる。
5.まとめ
異年齢保育のやりがいや魅力、異年齢保育を行う上での注意点をご紹介してきましたがいかかでしたでしょうか。
子どもたちにとって、異年齢保育はたくさん良い刺激を受けることができ、大きな成長につながります。
保育士にとっても多様な保育のあり方を学ぶことができる良い機会になりますね。
はじめて異年齢保育を経験する方にとって、最初は失敗したり迷ったりすることもあるかと思います。
ですが、保育に対して以前と違う考え方を持つことができたり、今まで見えていなかった子どもたちの良さを再認識できるチャンスでもあります。
これまでより見聞を広めたステキな保育士さんになってくださいね。
応援しています!