一人で遊園地に行きたいお母さん


「遊園地で特別なピンバッジがもらえる日なので行かなくてはならないんです。私は仕事を休んで行きます。この子は保育園で預かってください」

こんな風に保護者から言われたらあなたの園ではどのように対応しますか?

これは実際にあった、対応にとても困った事例です。

 

◯遊園地にはまってしまったお母さん

そのお母さんはシングルマザーで、日々仕事を頑張りながら0歳児のYちゃんを育てていました。

Yちゃんの祖父母の協力も得られているし、お母さんとYちゃんの関係もしっかりと愛情が育まれていました。

そんなお母さんがある日「今日のお迎えから、全ておじいちゃんが来ることになります」とどんどん告げてきました。

「残業ですか?大変ですね」と尋ねると、「いいえ。遊園地の年間パスポートを買ったので、仕事が終わったら毎日行くんです」との答え。

非常に驚きましたが、保育時間中は仕事をしているので園としては預かることに何の問題もありません。園長と相談してYちゃんの様子をしっかりとみていくことにしました。

そしてその日から祖父のお迎えが始まったのです。

 

○機嫌の悪いYちゃん

祖父のお迎えが何日か続いていくと、Yちゃんの機嫌は次第に悪くなっていきました。

家での様子を聞くと、夜はお母さんとはほとんど顔を合わせていないようでした。

職場から遊園地までは電車で1時間。

遊んで帰ってくる時にはYちゃんはもう寝ているのですから、親子のふれあいの時間は朝のほんの少しの時間です。

お母さんに十分に甘えられないストレスと、祖父母だけでは乱れがちな生活リズムが不機嫌の原因でした。

お母さんの存在が薄くなっていくことに、保育士も危機感を抱いているものの、現実打つ手がない状態でした。

 

◯子育てから目を背けたくなる現実

Yちゃんのお母さんはそれまでは一生懸命Yちゃんに向き合うお母さんでした。

でも何かのきっかけでその気持ちがど切れてしまったのでしょうか。

Yちゃんのお母さんに限らず、子育てから目を背けたくて自分の趣味に走ったりする保護者は多くみられます。

時にそれはギャンブルだったり、お酒だったり、友人との遊びだったりします。

ギャンブルやお酒のように、身内や周りの人からも「やめた方がいい」と言われる類のものは目立ち安く問題としてはっきり形が見えてきます。

しかし今回は「遊園地に行く」という少し変わった形の現実逃避です。

しかも仕事はちゃんとしていますし、子供の安全を見守る祖父母もいます。

明らかに何かがおかしいのに、うまく対処できない事例と感じました。

 

◯そして熱が出た

「遊園地で特別なピンバッジがもらえる日なので行かなくてはならないんです。私は仕事を休んで行きます。この子は保育園で預かってください」と言われたのは遊園地に通い始めてそう経っていない日でした。

当日ではなく少し前に、しかもそのひは自分がお迎えに来て伝えてきたのはお母さんの良心からでしょうか。

その頃は今よりもっと「親が休みの日は休ませてください」というルールが厳しい時代でしたので、当然園としてはNOという答えを出すほかありません。

ところがお母さんは「絶対にピンバッジが欲しいんです」「朝から行きたいんです」と譲ろうとしません。

「休んでください」「預かってください」の押し問答が続きました。

そして、いよいよ前日になると、Yちゃんは発熱したのです。

「熱があるYちゃんを預かることはできませんよ?」

園長の最後のひと押しが聞いたのか、お母さんは「休ませます」と言いました。

そして次の日はお休みし、それを境に遊園地に一人で行くことはなくなりました。

 

◯お母さんの本当の気持ち

お母さんが落ち着いた頃に、ゆっくりとお話しする時間を持ちました。

お母さんの本音がたくさんこぼれ落ちるようなお話でした。

若くして産んでシングルマザーになって楽しいことが何一つできなかった。

やっとお給料がもらえても、全部この子に消えていく。

昔から好きだった遊園地全然行けていないことに気がついたら、無性に行きたくなりその気持ちを抑えることができなかった。

仕事終わりに遊園地に向かうときは「とにかく行かなくちゃ」という気持ちが強くてちっとも楽しくはなかった。

でもそれでも行きたかったし、子供と離れたかった。

迷走するお母さんの気持ちがよくわかるような気がしました。

遊園地にはまってしまったわけではなく、ただ現実から逃げ出したい手段だったのではないでしょうか。

本当なら家族みんなで楽しみたかったのかもしれません。

でも、それができない現実もお母さんを苦しめていたのでしょうか。

それからはお母さんは少し落ち込んでいたものの、だんだんと元気を取り戻してきました。

「いつでも愚痴を聞くからね」と声をかけると、「いっぱいありますよー」と笑顔で返してくれました。

さらに「Yがもう少し大きくなったら一緒に行きたい」と計画を話してくれたりもしました。

 

◯見える変化は逃さない

今回のように「遊園地に通いつめる」という目見える変化(おかしいなと思う変化)があったので結果的にお母さんの心の辛さを聞けるところまでたどりつけました。

でももしもお母さんが隠れて行っていたら?

家庭内でもめていても保育園には隠していたら?

保育士が気がつくのはもっと遅くなっていたでしょう。

もしも「何かおかしいな」と感じることがあったら園長を中心にして対策を考えてください。

保育士一人で抱え込まないで、みんなで対応してください。

間違っても「あのお母さん変だよね」で終わらせないでくださいね。

変化の裏には必ず理由があることを忘れずにいてください。

 

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