保育士として働いていると悩みで頭を抱えることはよくありますよね。
その中でも、保護者の方からのクレームは頭痛の種になっているのではないでしょうか。
出来るのであれば、クレームは避けたいものですよね。
しかしながら、クレームは必ず発生してしまいます。
では、クレームをストレスなく解決する方法はあるのでしょうか。
この記事ではクレームが起こる4つの理由と解決方法をご紹介します。
明日から実行に移せる簡単なものですので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. クレームが起きる4つの理由
保護者が抱く感情は様々ですが、保護者の心情は代表的な以下の4つの心情パターンに分類されます。
- 本当に困っているから
- 不当な扱いを受けたくないから
- 保育園を良くしてあげたいから
- 機嫌が悪いから
具体的には2章で解説しますが、クレーム解決は「原因となった理由」と合わせて「保護者の心情」を知ることがコツになります。
1-1本当に困っている
保護者にとって、クレームを言う事は時間や労力が必要なことです。
それでもあえて保護者がクレームを言う理由は望んでいたモノを得られず困っているからです。
とある保育園では、下記の事例がありました。
保育園の遠足で服装や持ち物などの詳細を知りたかった。
でも、配布されたプリントには詳しく書かれておらず困っていた。
子供の迎えの際に、担任の先生に確認したところ「配布したプリントをちゃんと見ましたか?」と冷たく言われてカチンときてしまった。
この様にカチンときた経験は皆さんもあるのではないでしょうか。
先生も保護者からの質問を受けることが日常ですので、プリントの内容に関しては簡潔に対応してしまったのかもしれません。
しかしながら、保護者の方は困っているのです。
この様な気持ちの温度差によってクレームが発生してしまう事があります。
保護者が質問してきた不満が1次クレームとするなら、このクレームは対応の最中に発生した2次クレームです。
このクレームの連鎖を「2重クレーム」と言います。
これは避けられるもので、絶対に起こしてはならないクレームです。
しかし、残念ですが、このように対応方法のミスによってクレームに発展するケースは少なからずあります。
対応方法によって避けられるクレームを減らしていくことをまずは心がけましょう。
1-2不当な扱いを受けたくない
当然ながら、保護者の方はご自身のお子さんを第一に考えています。
特別といわないまでも他の子供と同じ対応を受けたいと考えています。
下記は保育士さんが受けた保護者のクレームです。
先生と遊びたいのに○○ちゃんたちに構ってばかりで遊んでもらえない。
そういった不満を子供から聞いた。
我が子にも平等に接してほしい。
この様なクレームに心当たりがありますでしょうか?
保育園側にとってはそれほど重要なこととは感じないかもしれません。
お子様の目線ですので事実とは違う場合もありますが、保護者目線ではそれは関係ありません。
園児だけでなく保護者に対しても公平な対応を心がけ、クレームを起こさないようにしましょう。
1-3保育園を良くしてあげたい!
クレームの現場では元職員や元保育士、同業者など保育に近い人たちからのクレームが少なからずあります。
実際、クレームのありがたみをその場で実感するのは難しい事かもしれません。
ただ、保護者の怒った顔やクレームの理由などはなかなかわからないことが多いです。
対応する保育士さんは、保護者の方が嫌がらせでクレームを言ってきたのではなく、保育園の事を考えて言ってくれているのだという気持ちの余裕を持ちたいですね。
1-4機嫌が悪い
これが1番やっかいな保護者の心情です。
例えば「子供の服が汚れていた」というクレームでも、様々な心情で仰っているのです。
平常心で事実を説明してくれる方もいれば、時間がなくイライラしていたり、機嫌が悪い状態の方もいたりします。
つまり、クレームをつけてきた保護者の気分次第でクレームになる場合とそうでない場合があるのです。
しかし、これらはクレーム発生を防げる対応方法があります。
時間がなさそうだと感じた場合は「お時間は大丈夫ですか」と確認しておけばそれ以上保護者が不機嫌になることを避けられるはずです。
また、機嫌の悪い保護者には言葉尻や表情をとらえて、より怒らせないよう、話し方や言葉遣いを注意してください。
2重クレームに発展しやすいパターンですが、対応方法を柔軟に変えることで避けられるので気を付けましょう。
2.クレーム対応の4つの手順
保護者からのクレームを上手に対応するためには4つの手順に沿って進める必要があります。
保護者の4つの心情パターンから来るどの様なクレームでも、手順に当てはめていく事でほとんどの場合上手に対応が出来ます。
- 保護者の心情を理解して、不快にさせた事実をお詫びする
- 保護者にとって何が問題なのか、原因と事実の確認を行なう
- 問題の代替案や解決策を冷静に保護者へ説明する
- 再度、保護者にお詫びをした上で、ご意見を頂いたことに感謝をする
上記の手順を踏まえる事で2次クレームを回避することができます。
それでは、各手順のポイントを見ていきましょう。
2-1.保護者の心情を理解して、不快にさせた事実をお詫びする
- 迅速な対応を心がける
- 最初の3分が勝負
- まずは保護者へ不快な思いをさせたことをお詫び
- 心情を理解して話を聴く
- あいづちや間の取り方を的確に使いこなす
2-2.保護者にとって何が問題なのか、原因と事実の確認を行なう
- クレーム解決に必要な事実を集めて整理し、記録する
- 適切な質問を行い、原因を探る
- 保育業務の知識や常識も欠かさない
2-3.問題の代替案や解決策を冷静に保護者へ説明する
- 保護者の側に立って話を進める
- お断りする際には、言葉を慎重に選ぶ
2-4.再度、保護者にお詫びをした上で、ご意見を頂いたことに感謝をする
- 誠意をもってお詫びをする
- 感謝の気持ちを伝える
- クレームは園内で共有する
クレームは解決したら終わりではなく園内で共有し、今後に活かしましょう。
クレームをチャンスととらえて対応することで心遣いのある対応が出来るのではないでしょうか。
3.本当にあったクレーム事例
さて、ここでは実際にあった保護者からのクレームをご紹介致します。
今回は、「怪我編」「行事編」「保育園の運営編」に分けました。
では実際に見ていきましょう。
3-1怪我編
- 保育園で怪我をしたが病院に行くほどではなく看護師に診てもらい傷の対応をした。その後病院に連れていってほしかったとクレームが入った。
→まずは看護師に診たうえでの判断だということを丁寧に説明しましょう。
可能であれば看護師からの説明していただくと良いでしょう。 - 子供自身で出したおもちゃにつまずき軽いけがをした。両親ともに過保護だったため、転びそうなものを床に置かないように言われた。
→まずは保護者の言い分を聞きましょう。今回の件を園内で共有し、再発防止に気を付けると説明することが重要です。
3-2行事編
- 毎年、プール納めのイベントで魚の掴み取りをしている。保護者が、動物虐待ではないのかと訴えてきた。
→保護者の心情パターンとしては「保育園をもっとよくしたい」に当てはまる事例ですね。
このような場合には、行事の趣旨や目的を説明することで納得していただける場合が多いです。注意点としては、保護者の考え方を否定していけません。
否定をすることで2重クレームに繋がりますので、注意が必要です。 - クリスマス会で子供が希望していた役者に配役した。保護者が「どうしてうちの子はこんな役なのですか! ?」と泣いて訴えてきた。
- 運動会の練習でかけっこをした。保護者から「毎年走るのが早い子とばかりなので1番になれない。」と言われた。
②③の保護者の心情は「我が子が不当な扱いを受けたくない」から起こるクレームですね。
まずは保護者の話を聞きましょう。そのうえで、不当な扱いをしていない事や選び方の説明をしてください。
ここでの注意点ですが、「○○ちゃんも同じ役ですよ」など他の園児を引き合いに出すのはやめましょう。
保護者に対しての説得力としては弱い割に、他の園児の親からクレームが発生する可能性も出てきます。
3-3保育園の運営編
- 「子供が朝起きるのが苦手なので午睡の時間より早く起こしてくれないか」と保護者が言ってきた。
→こういった内容は園の方針に沿った返答を行いましょう。もし、お断りをする場合には即断るのではなく、保護者の言い分を聞いたうえで保育園の事情を説明し丁重にお断りしてください。 - 「我が子は1歳児でまだ歩けないから散歩に連れて行ってくれないのではないか」と言ってきた。
→保育園での園児に対する取組体制はある程度ルーティン化していると言っていいでしょう。
しかし、そのルーティンに対しても、保護者が誤解することが多く「我が子が不当な扱いを受けている」と取られてしまいます。
この様な場合には保護者の心情を理解することが重要です。
保護者の立場を理解し、保育園での取り組みを説明することで納得していただけるはずです。
4.クレームを起こさないようにするためには
クレームには保育園全体での対応が基本です。
クレームに直面すると、うんざりしたり慌てたりしがちですよね。
クレームはあなた個人ではなく保育園に向けられてものであると考えるべきです。
あなたが感情を耐えきれず爆発させてしまったらどうなるでしょうか。
その場合、2重クレームでは済まされない事態に発展してしまい解決が困難になってしまいます。
時には「あなたの態度が気に入らないのよ」と保護者の方から言われることもあるでしょう。
そんな時でも冷静に対応することが重要になってきます。
そして一人で対応するのではなく保育園全体でカバーできる環境を作るのが大切です。
4-1組織的なクレーム対応体制を作ろう
さて、他の先生がクレーム対応をしていたとします。
その時、「私じゃなくてよかった」と他人事のように思ってしまったことはありませんか?
まず、こういった考えを抱かない事がクレームを起こさないための第一歩です。
前述したとおり、クレームは特定の保育士さんに向けられているものではなく、保育園に向けられたものです。
あなたも保育園の職員として無関係ではないのです。
それでは組織的なクレーム対応に必要な2つのポイントについてみていきましょう。
- クレーム対応方法の共通認識を持つ
対応した職員によって異なった返答をしてしまう場合が実際にあります。
よくあるクレームの内容とその対応策を保育園全体で共有することで、安定した対応が可能になるため、クレームが発生してしまう状況を回避しやすくなります。 - 職員間の連携を強化していく
クレームを受けたら、出来る範囲の対応は自分自身で行いましょう。
そうすることで、だんだんとクレーム対応をうまくこなす力が付いてくるので、それが自信になり、成長へとつながっていきます。
ただし、自分の出来る範囲で対応しても解決しない場合もあると思います。
その際には上司や経験豊富な方に代わりましょう。
立場が上の人に代わることで、保護者が「偉い人が出てきてお詫びをしてもらえた」と思い、クレームを納めさせる理由が出来るのです。
5.最後に
いかがでしたでしょうか。
まずは保護者の心情は下記の4パターンに分けられることを理解しましょう。
- 本当に困っているから
- 不当な扱いを受けたくないから
- 保育園を良くしてあげたいから
- 機嫌が悪いから
そして、保護者の様々な心情でも4つの対応方法を適切に行うことで解決に繋がります。
- 保護者の心情を理解して、不快にさせた事実をお詫びする
- 保護者にとって何が問題なのか、原因と事実の確認を行なう
- 問題の代替案や解決策を冷静に保護者へ説明する
- 再度、保護者にお詫びをした上で、ご意見を頂いたことに感謝をする
また、保育園全体でクレームの対処方法について話し合ってみてください。
クレームを1人で解決することはスキルアップにも繋がります。
一方で、保育園という組織全体で解決することで今後のクレームの発生を抑えることも可能になるのです。
保護者からのクレームに頭を悩ます保育士さんが減るように願っています。