あなたは保護者に悩みを相談されたことはありますか?
「悩み」と一言で言ってもその内容は様々です。
よくあるのは子育てのことでしょうか。私たち保育士は子育てのプロですからこれは当たり前のことですね。
しかし、長く保護者と付き合っているうちにその悩み相談は多岐にわたってきます。
今回は「保護者の悩みへの答え方」を考えてみましょう。
◯悩みの種類を見極めよう
一言で「悩み」と言っても様々なものがあります。
・ただただ聞いてほしい(日頃のぐち)
・プロのアドバイスが欲しい(子育て)
・自分の要望を聞き入れて(察して)欲しい
・人生最大の悩みで答えが見つからない(離婚など)
目の前の保護者が今どんな気持ちで相談事を持ちかけてきているのかを、冷静に判断する必要がありますね。
あなたは、その見極めができていますか?
◯「ぐち」にはおうむ返し
夕方のお迎えの時間、忙しさにぐったりのお母さんによくみられるのが、「ぐち」です。
会社のこと、子供の兄弟のこと(学校のこと)、夫のこと、祖父母のことなど、多くはお母さんを取り巻く人間関係に起するものが多いです。
この場合、何かに「答えよう」としてはいけません。
もちろん自分の経験上とっておきの秘策でも知っているのならば別ですが、愚痴っている人が欲しいのは「答え」ではなく「共感」です。
「上のお兄ちゃん全然勉強しなくて困ってて」と始まったら、「わー勉強なかなかしてくれないんですねぇ」とおうむ返し。
「塾も嫌がっていかないし」と言われたら「塾に通うの嫌なんですねー」と返します。
人間は自分の言葉を繰り返されるとそれだけで「あ、この人は話を聞いてくれている」と感じることができます。
お母さんは、塾に通わせるための方法を知りたいのではなく、「大変なことを抱えているけど頑張っている自分」を知って認めて欲しいわけです。
ですから、間違っても反対意見を言ったり、具体的なアドバイスを長々とするのはやめましょう。
◯子育ての悩みはすぐに「言葉」を返してあげましょう
時には子供のしつけや、発達の悩みを持ちかけられることもあります。
これは保育士にとってはとても喜ばしいことですね。
すぐに答えられるような内容であればいいのですが、発達に関する大きな問題、あるいは他の友達との関わりが出てくるような問題のある行動についてはすぐに応えることができませんね。
特に経験の少ない若い保育士は、言葉に詰まってしまうこともあるかもしれません。
そんな時は、まず園での様子を伝えます。
普段自分が見ている姿ならば伝えることができますね。
「〇〇が心配なんですね。園では△△な様子の時もあります(できれば肯定的な表現で)」
そのように一度返しながら次の答えを探しましょう。
園長にも相談するべきこことなのか、他の担任にも様子を聞くのか、担任として申すこそ様子を見たいのか、答え方は様々ですね。
一番いけないのは返答に困る様子を見せることです。
言葉詰まった瞬間に「あっ、うちの子発達が遅れてるんだ」などと誤解を与えてしまうことがあります。
気をつけましょう。
◯悩みと見せかけての要望
時には言葉の裏を読まなければならない時もあります。
例えば「夜全然寝なくてー」などと話している裏に「保育園の昼寝が長いんじゃないの?」という気持ちが隠れていたりします。
「うちの子だけでも起こしておいて欲しい」という要望を保育士に伝えることができずに、別の言葉で問題提起をしているのですね。
それに気がつくか気がつかないかは、あなた次第なのですが、気が付いた時には焦らずに一度誰かに相談しましょう。
裏の気持ちに気がついたからと言って「あーこういうことですかー?」などと返すと、相手を傷つけてしまうこともあるからです。
相手が言いにくいことほど慎重に対応しましょう。
◯人生には踏み込めない
長く保育士をしていると、「離婚」「DV」「恋愛」などの深い悩みに遭遇することもあります。
そのような話をされるという事は信頼されているという現れかもしれません。
でも人生を左右するような内容には、迂闊に返事をするべきではありません。
人は誰かに「〇〇した方がいいよ」と言われ何かを決断した後に、「決断したのは失敗だった。あの時言われた通りにしなければよかった」と思ってしまうことがあるからです。
特に保育士という立場からの言葉には重みがあります。
「先生が言うのなら」と思わせてしまうところもあります。
ですから、このように重大な問題を投げかけられた時には十分に考える必要がありのです。
・必ず上の先生に相談しよう
相談してきている保護者には「他の先生の考えも聴きながら相談に乗りたいと宣言しましょう。一人では抱えきれないからです。
・DVなど命の危険が迫っているような時は、迅速に行動しましょう。
「離婚した方がいいよ」などのアドバイスではなく、シェルターなどの身を守る術を、園長などとともに示していきましょう。
・話を聞くことで、相手の気持ちを整理していこう
自分の主観は一切挟まずに、相手の気持ちを引き出すような聞き方をしましょう。心の中に「決めるのは自分(保育士)じゃない」ということをいつもおいておきます。
◯まとめ
悩みへの答え方といっても、それは一つではないことがわかりましたか?
相手のことをよく見て、自分の経験で対応できることなのかどうかをしっかり見極めていきましょう。
保護者は「友達」でも「身内」でもありません。
立場をわきまえながら、しっかりと保護者を支えていってください。