運動会から見えてくるもの

ライン インスタグラム
ライン インスタグラム
Pocket

第1章 初めてのなわとび練習

さあ、新年度を迎え年長児のスタート。

就学前とあって、子供たちに「あれもさせたい、これもさせたい!」と保育士の気持ちも高まります。

今年は縄跳びの演技をすることに決めました。

運動会のための披露ではなく、子供中心の運動会に!

そして、子供たちの練習の成果と子供たちの成長を保護者の方々に感じ取ってもらいたい!

 

4月から練習開始。

初めて縄跳びをもつ子供たち。

はじめは、へびさんにょろにょろ、くぐったり、とんでみたり。

そんな遊びから始めました。

そして、一人ずつ縄跳びを前に回してぴょん!

子供たちは前飛びの練習からスタート。

「前に何回まわしてとべたか」

段階的にクリアしたらごほうびシールをはるようにしました。

シールが多くなっていく毎に、子供たちは大喜び。

引っかかっては飛び、飛んではまた回す…

その繰り返しで、子供たちは少しずつ要領をつかんでいきました。

お友達がとべるようになるのを見て子供たちも大奮闘。

いつもいつも縄跳びを手にとっては、練習を始めます。

少しずつクラスの雰囲気が縄跳びモードになっていきました。

 

縄跳びの練習が終わった後は、縄跳びを4つ折りにして、縄跳び入れにお片付けをします。

縄跳び箱には、「一緒にとんでくれてありがとう!なわとびより」のメッセージが書かれています。

「よーし、明日はとべるようになるぞ!」

「とべるよ!僕がぎゅっと結んでやる!」

お互いに、励まし合いながら、縄跳びをお片付けする様子は、とても微笑ましく感じます。

 

第2章 縄跳び演技に挑戦!

“縄跳びとお友達”になることで、意欲を見せ始めた子供たち。

1人、2人、3人ととべるようになってきました。

ここでまた、次のステップ。

表を作って「繰り返し何回とべたか」で数字を書くようにしました。

ついには100回クリアする子も!

子供たちの集団の力は、子供1人1人を変えていきます。

 

何とか全員とべるようになった8月。

いよいよ10月の運動会に向けて構成を考えなければいけません。

音楽に合わせての演技なので、縄跳びを使った手技も必要なのです。

「縄跳びをつかってどんな形ができるかな?」

と子供たちに問いかけると、

「ちょうちょができる!」

「振り回してカウボーイみたいにできる!」

「お花も!みんなでメリーゴーランドもできる!」

子供たちの発想はどんどん膨らんでいきます。

「ねぇねぇ、僕たちのクラスの名前は星組だから最後はみんなで星をつくらない?」

「いいね!いいね!」

子供たちのアイディアを聞きながら、この子供たちの気持を受け入れて、どのような構成にしたらいいか、私はずっと考えました。

子供たちのアイディアをもとに構想をねりますが、どうしても時間内に終わらず四苦八苦の日々です。

 

みんなでつくり上げた縄跳び演技。

少しずつ運動会の日も近づいてきました。

まず縄をふりながらカウボーイで入場をします。

そして、2人組、3人組、4人組となり、それぞれ縄跳び演技。

最後は全員で、メリーゴーランドのように縄跳びの片方をあげてくるくるまわり、フィナーレの星を縄跳びでつくります。

時間内に終わらない日もあったけれど、みんなの心を一つに頑張ればそれでいい!

子供たちが力を合わせて頑張ってきた過程の方が大切なのだから。

 

第3章 子供にとっての運動会

そして迎えた運動会当日。

さぁ、いよいよ縄跳び演技の始まりです。

直前に、Nちゃんが私のところにやってきました。

「先生、私、自信ない。時間内におわりそうにない!」

Nちゃんの最後の縄一本で星が完成するのです。

「大丈夫!もし時間内で間に合わなくても、終わるまでちゃんと待ってるから大丈夫よ!」

私は、Nちゃんの肩をポンっとたたいて送り出しました。

 

しかし、Nちゃんの不安が的中。

焦っているせいか、動きがいつもと違います。

いよいよ最後の星になりました。

ラストは、Nちゃんがお友達に縄跳びをひっかけていよいよ完成です。

ところが、Nちゃんは、違うお友達のところに縄をひっかけてしまったのです。

Nちゃんは慌てて、ひもをとりはずし、やり直しました。

そして―――なんと時間ギリギリに“星”が完成したのです。

 

次の日、Nちゃんは、私に手紙をそっとくれました。

安心感に満ち溢れた顔です。

「せんせい、わたしをしんじてくれてありがとう」

そこにはそう書かれていました。

私は、嬉しくてその手紙を握りしめました。

よかった!最後まで子供を信じて、子供と一緒に頑張ってきてよかった!

Nちゃんにとっても、大きな自信になったことでしょう。

保育士が真正面から子供と向き合うことにより、子供は“答え”を出したいと頑張ります。

運動会は、1人1人子供の心の成長も含めて、大きく子供が変わっていく原動力となるのです。

 

 

 

保育士の求人
保育士の求人