「保育士の仕事の中で大変なことはなんですか?」と質問されたら、あなたはなんと答えますか?
ランキングにしたら毎回1位になりそうな答えは「保護者対応」ではないでしょうか。
今回は保護者との関わりを、その多様性から考えていきましょう。
◯同じ家庭は2つとない
今からいろいろな家庭のパターンをお話していきますが、まず最初に「同じ家庭は2つはない」ということを頭の片隅に置いておいてください。
どの家庭もいろいろな事情があり、いろいろなやり方があり、いろいろな問題を抱えているのです。
ですから「こんな家庭にはこうすればいいのね」と安易に取り入れることだけはしないでくださいね。
あくまで対応の参考になるための「パターン分け」をしたお話です。
◯子育てがわからない
保育士には「子育てはこうあって欲しい」という理想があります。
今までの経験や勉強してきたことからわかる理想です。
例えば「生活リズムを整え健康になる為には、早寝早起き・正しい食習慣」のようなことです。
このような理想的な姿からかけ離れてしまっている保護者には、どのように対応して伝えていけばいいのでしょうか。
「生活リズムってなに?」「食べたいもの食べさせて何がダメなの?」のように、子育てに大切なことへの知識がない保護者がいます。
保護者自身が、生活リズムが乱れた家庭で育っていたり正しい食生活の経験がなかったりすると子供に対しても同じように関わってしまうことがあります。
この様な場合は一つ一つ正しい方法を示してあげなければなりません。
意外にも「知らなかった」親であるほど、望ましいやり方を知らせると頑張ってやってみようとしてくれます。
「知らないからできない」ことに気がついてあげれば、解決することも早いかもしれません。
私が担当していたお母さんは「消化にいい食べ物」がどんなものか分からず、具体的なメニューを教えてあげたことがあります。
「自分の親は病気でも何もしてくれなかったー」と言っていましたので、子供の頃にお腹を壊した時に「お粥」を食べさせてもらえなかった人は、自分の子供が下痢をしていても何をあげたらいいかが分からないということです。
このお母さんは「先生。先生が言った通りに、うどんをものすごく柔らかくして食べさせたよー」と報告してくれました。
一度覚えてしまえば、次からは大丈夫になるはずです。
◯いい親だと思われたい
先程の親とは逆に、知識が豊富な保護者もいます。
夜は9時までには寝かせないといけない。
野菜を好き嫌いなく食べなければいけない。
整理整頓ができる子にしなければいけない。
挨拶は相手の目を見てきちんとしなければいけない。
小学校に行くまでに文字覚えなければならない。
どれも正しいことですし、子供にとっても大切なことです。
問題は「〜〜しなければいけない」という点です。
日常の行動が繰り返される中で常に「〜〜しなくてはならない」と思っていると、それが出来なかった時にイライラがつのってしまいます。
「なんでやらないの!なんでできないの!」そう思ってしまうと子供に対してもきつい言い方になったり、怒ってばかりになってしまいます。
そんな状況にはどのように対応しますか?
正しい事をやろうとしているのですから、それをとがめる事はできません。保護者はむしろ褒められたいと思っているからです。
まずは、正しい知識でやろうとしている事を認めてあげたいですね。
しかし、きちんとやろうとするあまりに子供への接し方がイライラした物になるならば、やり方を考えていかなければなりません。
そんな時は子供の様子をよく見て下さい。
うまく生活リズムが出来あがっているのならば、しばらく親子関係を見守ってもいいでしょう。しかし「無理をしている」「子供が毎回怒られている」「親も疲れている」ような時には、保育士がアドバイスしなければなりません。
先程述べたように「やっている事は間違いではない」という事を伝えながら、「手を抜いてもいいことがある」と知らせてあげてください。
園のお迎えが19時過ぎになる家庭で21時に寝かせるのが困難だと思ったら「21時に寝ることが大事なのではなくて、たとえ22時でも毎日同じ時間に布団に入ればいいんですよ」と一緒に考えてあげましょう。
保護者の「〜〜しなければ」の固定概念を取り払いながら、「頑張っている」事を認めてあげて、肩の力を抜いた子育てができるように援助してあげてください。
◯虐待の疑いがある
保護者対応をしていると、虐待を疑う様な場合があります。
子供の体のあざや怯えた態度から発覚することも多いのですが、日々の保護者の様子からも虐待がわかることもあります。
虐待についての話は、また別の機会にお話したいと思いますが、保護者に一番近い私たち保育士が発見するチャンスを握っています。
何かおかしいなと感じたら、必ず先輩保育士や園長と情報を共有してください。
自分だけの判断で動かない様にしましょう。
◯まとめ
今回だけでは「保護者対応」は語り尽くせません。
同じ家庭が二つはないということを頭に置いて、その時その時に適切な対応ができるように勉強をしていきましょう。
またの機会に詳しくお話ししたいと思います。