保護者の対応エピソード~親が変われば子供も変わる! ~

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保護者とのコミュニケーションは、保育士にとって大事なことですが、保護者も様々な方がおられます。
日々の保育の中であった事を伝える連絡一つにしても、言葉を非常に考えなければならない保護者。
何か要望や相談をされてくる保護者に対しての対応の仕方に悩まされるなど、クラス担任をしていると本当に毎日いろんなことがありますね。
今回は、私が年長の担任をはじめて受け持った時に、成長発達にちょっと気になる子S君とその保護者の対応について学んだことを紹介させて頂きます。

子供を怒りながら登園してくる保護者

毎朝の登園時間、子供を受け入れる保育士は、一度に多くの子供を受け入れ、
その時の健康状態や気になった事を保護者から連絡を受けたりしなくてはいけないのでとても忙しい時間になります。
私が働いていた保育園では、登園したら、カバンの中からお帳面やコップ、お箸、
手洗いタオルをだして所定の位置に設置するのが子供の朝の日課なので、
保護者は子供がそれをやり遂げるまで見守ってから仕事に行かれます。

ところがS君は毎日お母さんに怒られて登園していました。
激怒している母親とそれによってS君は大泣きをして手を引きずられるようにして保育室へ入ってきます。
もちろんそんな状態なので、自分のカバンを開けて朝の支度なんてする気持ちにもなっていません。
そんなS君を母親は無視して自分でササッとカバンの中の物をだしてやってしまい、
怒り口調で「先生お願いします」と慌てて仕事へ行かれるのです。

置いていかれたような状態のS君はやりきれない気持ちが爆発し、
他の子供たちが描いているスケッチブックに殴り書きをしたり、作っている粘土やブロックを壊したり、
ひどいときには椅子を投げようとしたりします。

そんなS君の行動で、朝の支度を終えた子供たちが穏やかに保育室で好きな遊びをしている雰囲気も一気に殺伐とした雰囲気に変わるのです。

私は毎朝、S君が暴れない様に気にかけながら、朝の受け入れをいている生活がしばらく続きました。

冷静になると話を聞けるS君

S君は、2歳で入園してきて、当時から発達にちょっと問題があると言われてきていました。
お母さんもそのことを気にしていて、月に1回発達指導を受けておられました。

年長になったS君は、落ち着いて穏やかにしている時は子供同士うまく遊べるようになりましたが、
言葉がうまくしゃべれない時があり、自分の気持ちに沿って言葉が出てこない時に子供同士のちょっとしたトラブルになる事がありました。
そんな時、うまく言えないもどかしさから、物に当たったり、キャーと大声で奇声をあげたり、
落ち着かなくなってしまうのです。
しかし冷静にS君のペースでゆっくりと向き合うとちゃんと受け答えもできるのです。

保育の中で友達同士トラブルになった時、ちょっとイライラしてきているがまだ冷静な状態の時に
保育士が仲立ちになって話に入るとそれが大きなイライラや感情的に発展せずに
お友達とのコミュニケーションを続けることができるようになってきていました。

普段そんな様子で関わっていたので、朝からS君に激怒してくる母親の対応が
とてもS君の気持ちに寄り添っていないように見えて嫌でした。
朝から怒らないで穏やかに登園してきてくれたらどんなに平和だろうといつも思っていましたが
それをどうやって伝えようか・・・言い方次第では取り違えて母親からの怒りをかってしまわないか?
朝の時間のない時にどうやって声をかけたらいいのか?考えていました。

保護者の立場になって考える

ある朝、いつものようにS君が大泣きをして登園してきました。
母親は「なんでいつもそうなのー??」とS君に対してその日も感情的です。
私はそんな様子を見ていて、いつもはカッとなっている母親にあまり深く声をかけませんでしたが、
その日は「お母さん、なんで怒っているの?」と率直に声掛けをしてみました。

すると、母親は「朝の忙しい時間帯に保育園に行くため着替えもしなくて、おもちゃを出して遊びだすので怒っちゃって!」と話しました。

それを聞いて、もし私がこの母親の立場だったら、出勤時間もあるし忙しい朝にそんなことをされれば単純に怒れてきてしまうと自分に置き換えてみたら同じような気持ちになる事に気づかされました。

「それは、朝は忙しいから腹が立ちますね。出勤の時間は大丈夫ですか?」と話すと、
「大丈夫ですいつも8時に園を出ると電車に間に合うので、ではお願いします」と急いで行かれました。

私は泣いて手が付けられなくなるS君に落ち着いてから
「S君お母さん朝はやることがいっぱいで忙しいから怒っちゃったんだって。保育園帰ってから、お母さんとおもちゃで遊んでもらおうね」と言いました。

その日お迎えに来られたS君のお母さんに「今日は電車間に合いましたか?」と聞いてみました。
すると「大丈夫でしたよ」と言ってから、私に「先生いつもごめんね。Sが暴れるから迷惑でしょう」と言ってこられました。
いつもはそんな声掛けもありませんでしたのでちょっとビックリしました。
ああ、このお母さんもいつも暴れているS君を置いていくのを気にしていたんだなと思いました。

私は、保育園では、ゆっくりしたペースでS君は随分コミュニケーションがうまく取れてきていること
穏やかな落ち着いた気持ちでいたら、何の問題もなく生活を送れていることをお話ししました。
そして、さらに切り込んで、朝もなるべく穏やかに登園してきてもらえたら、
朝の保育園でのスタートも気持ちよくはじめられるので、できたらちょっと早く起きて、
朝の時間に余裕があるとありがたいなと本音を話してみました。
お迎えにこられた帰りの時間は朝と違って時間に余裕があるので母親は冷静に朝のことを受け止めてくれました。

翌日から母親は、S君を怒らずに園に連れてきたのです。
そして「先生、今日は怒らない様に早い目に起こして余裕をもってきたよ」と私に言いました。
S君も穏やかに登園してきたので、自分でカバンを開けて、自分の持ち物を所定の位置に置いてスムーズに朝の日課を終えることができました。

親が変わると子供も変わった。

S君はそれ以来泣き叫んで登園してくる日が少なくなりました。
母親はS君と何かしら会話をしてきて、帰ったら~しようね~などと約束をして仕事へ行かれたり、
S君との関係が以前とは、はるかに変わりました。

たまにS君の機嫌が悪い時も、「今日は~があって」と今朝あったことを自分から事情を話してくれるようになり、
私もお家での様子から母親の気持ちをまず汲み取るようにしました。

以前はあまり話をされることがなかったのですが、段々自分からいろいろ話をされるようになり表情も明るくなり、
さらに母親は保育園に協力的な姿勢に変わって、秋の運動会の役員決めでは自分から手をあげて役員を引き受けてくださったのです。

S君は、母親が変わることでずいぶん様子がかわり、お友達と以前よりもうまく関係を築けるようになってきました。
以前のようにちょっとしたつまずきでイライラするようなことが随分減り、それ以外にも自分の物を貸してあげたり、
給食の配膳などのお手伝いを率先しておこなったりと人が困っている時に優しい心配りもできるようになってきました。
最初は小学校の普通学級に進学できるのも難しいかもと言われていましたが、
卒園時にはそんな心配も全くなくなりました。

保護者との関係は相手の立場に立つことが大事

常日頃、保育士は子供の側から様子を見ているので、
物事を子供のためにこうあるべきだという子供側からだけのまっすぐな考えに至ってしまいがちになりますが
子供に一番近くにいるのは親なのです。

親との信頼関係こそが子供を預かり、日々の保育をしていく上でとても重要なことなのです。
信頼関係を築くこと、それは先に相手の立場や気持ちを考えることが円滑な保護者との関係を築くにあたり大切な土台だなと学びました。
相手の気持ちになって物事を考えるようになると自然と保護者も保育士に信頼してくださるようになるのです。

子供も様々なら保護者もいろんな方がおられますが、子供の成長に寄り添った保育ができるようにするには、
常に保護者とのいい関係を築ける保育士でありたいですね。

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