保育士の仕事の中で、とても気を使い頭を悩ませるのが保護者との関係です。
保育士から保護者に伝えたいこと、してほしいことは山のようにあります。
また、保護者も同じように色々な想いを抱えています。
些細なことからその関係がこじれてしまうこともあります。
毎日の関わりの中で信頼関係を築くのが大切です。
タイヤはいくつ?
毎日お迎えが約束の時間を過ぎ閉園ギリギリに飛び込んでくるお母さんがいました。
園長から、時間厳守を伝えるように言われお母さんと話すことに。
駅から歩いてきてギリギリだと言うので、自転車できてはどうかと提案。
「あー自転車乗れないんです」と恥ずかしそうなお母さん。
「そっかー乗れないんですねー」と次の手を考えていると、「先生!一輪車なら乗れます!」と今度は嬉しそうな顔。
しばらく2人で顔を見合わせてから大笑い。
「赤ちゃんおんぶして一輪車乗ってたら有名人になれるね」と言うと、「有名人になったら困るから帰りはもっと速く走ってきます」と決意してくれました。
その後もギリギリではあるものの大幅な遅れもなく頑張っているお母さん。
顔をあわせるたびに「一輪車」と笑い合う日々でした。
あの時「もっと速く迎えにきてください」とだけ伝えていたら、お母さんは苦しい気持ちで毎日走って来ることになったのかな?
そう考えると、あの笑いあえた瞬間がとてもよかったんだと思えてなりませんでした。
伝え方、話し方、相手の立場の理解の仕方が大切だと気づけた出来事でした。
泣いたっていいんだよ
ご自身の親を亡くされたばかりのお母さん。しばらくぶりに会った時に声をかけました。
「大変でしたね。体調は大丈夫?」
少し顔色が悪いお母さんは、「泣いちゃダメだと思うとなんだか余計に疲れちゃって」と答えました。
「え?どうして泣いちゃダメなの?悲しい時は大人だっていっぱい泣いていいんですよ。
自然に涙が止まったらその時笑えますよ」
ちょっとびっくり顔のお母さんは少し涙ぐんで行きました。
あっ余計なことを言っちゃったかなと心配になりながら迎えた次の日。
お母さんから声をかけてきてくれました。
「先生昨日いっぱいいっぱい泣けました。そしたら今朝は少し気持ちが落ち着きました。
また悲しくなったら泣けばいいやって思えて。
周りは頑張ってっていうけど、泣いてって言ったのは先生だけです。
びっくりしたけど先生の言う通りにしてよかった。先生ありがとうございます。」
まだうるむ目を見て私ももらい泣きしながら、「大人だって泣きたいよね」と頷きあいました。
時として親ではなく、一人の人間として向き合うこともある。
そう思えた出来事でした。
保護者との関係は一朝一夕で築けるものではありません。
毎日毎日小さな石を積み上げるようにして作り上げていくものです。
この先生ならなんでも話せる、なんでも聞いてもらえるから始まって、
この先生の言うことならちょっと聞いてみようかなと思ってもらえる、そんな保育士を目指したいですね。