まだまだ梅雨の時期ですが、保育園ではもう夏の水遊びの準備が始まっていることと思います。
遊びの充実に加えて、安全保育のために話し合いも進んでいますか?
今回は水遊びでの事故について考えます。
怖いのは水の中だけではない
「乾性溺水」という言葉を聞いたことありますか?
溺れるのはほとんどが「水の中」ですがごく稀に「陸上」でも起こることがあります。
「溺れる」とは肺が水でいっぱいになってしまい息ができなくなる状態です。
水中にいる時に、何らかの原因で大量の水が入ってしまった時に起こるので、水辺で起こる事故です。
一方「乾性溺水」は水が気管に入った時に反射的に気道が痙攣してしまう状態です。痙攣した気道は空気を通すことができず肺に水は入っていないのに、まるで溺れたように呼吸ができなくなってしまうのです。
ですから、泳いでいなくとも水を飲んでむせただけでも起こる可能性があります。
この「乾性溺水」はとても稀な事例ですが、プールで水を飲んでむせている子供を見かけることは珍しいことではありません。
私たち保育士は、広い知識を持って「いつ何が起きてもおかしくない」という意識でいましょう。
この知識があれば、プール後の午睡時に、顔色が悪い、咳が多いなどの様子の変化に気をつけることができます。
溺れた子は暴れない
次は一般的な「溺れる」状態についてです。
保育士が子供達を注意して見る時にはどこに気をつけてみていますか?
いつもと違う動き(手足をばたつかせる・苦しそうな動きをするなど)に注視していませんか?
実は、人間が溺れる時はとても静かなのです。
ドラマなどでは手足をこれでもかとばたつかせていますが、実際に溺れた子供は静かに沈んでいきます。
目を開けたままの場合もあります。
これは「本能的溺水」と言います。
息ができなくなり、何が起こっているかわからないまま沈んでいくので暴れることはありません。
遊びで潜っている子と、本能溺水状態の子は区別がつかないということです。
この知識があると、少し離れたところから子供達を見守ることがとても危険であることがわかります。
「何かあれば暴れたりいつもと違う動きをするだろう」と思っていると、静かに沈んでいく子を見つけることはできません。
潜って遊んでいる子がいたら、それが遊びなのか、危険な状態なのかをよく見極めてください。
1秒たりともそばを離れない
「乾性溺水」にしても「本能的溺水」にしても、側についていることで防げるものです。
(乾性溺水は水を飲んだかどうかを見ておく必要があります)
つい水遊びの道具を片付けながら監視をしてしまうことありませんか?
プールから先に上がった子の方に気持ちが向いてしまうことはありませんか?
一人でも水に入っている状態ならば、1秒たりとも目を離してはいけません。
そしてできれば、プール内に入る保育士と、全体の様子を見渡せる保育士2人体制をとってください。
常に危険と隣り合わせであることを意識して、安全に努めましょう。
それでも事故が起こってしまったら
どんなに気をつけていても、起こってしまうのが事故です。
子供が溺れてしまった時の救急蘇生法は勉強していますか?
私が現役の時には、消防署の方に園まで来ていただいて蘇生法を教えていただきました。
人形を持参してもらい実際に「人工呼吸・心臓マッサージ」を体験させてもらえたのはとても勉強になりました。
頭ではわかっていても、実際にやるのは大きな違いがあります。
人形に息を吹き込む時に思った以上にたくさんの息を入れなければならないことや、乳児の場合の心臓マッサージは指で行うことなど、やってみなければわからないことがたくさんあります。
ぜひ、園長を通して消防署に問い合わせてみてください・
毎年行っても意味のある勉強会であると思います。
本格的な夏が来る前に、園全体で「水の事故防止」について話し合う機会を持って、安全で楽しい水遊びを提供してくださいね。