どの園にも、毎回決まったことを行う「ルーティーン」があると思います。
保育士の仕事はもちろんのこと、園児にさせることの中にも「ルーティーン」になっていることもありますよね。
今回はそんな「ルーティーン」に関するお話しです。
◯ルーティーンとは?
ルーティーンとは、決まった手順・毎回する動作・毎日する日課などのことを指します。
野球のバッターが打席に立つ時に、バットを回したり袖を直したりする動作を毎回同じように繰り返すことで、心を落ち着けて良い結果を残そうとする事などによく使われますね。
今回はそのルーティーンよりも「慣例」と言った言葉の方がしっくりくるでしょうか。
日課とも言えるかもしれません。
園で決めた行為を毎回繰り返すことと思いながら、読んでくださいね。
◯事例 【パジャマに着替える】
私が保育士になって間もない頃、勤めていた公立保育園ではどの園もパジャマを着てお昼寝していました。(もう30年くらい経つでしょうか!!)
給食を食べ終えると幼児は自分の衣類カゴからパジャマを出して着替えます。
昼寝から起きるとそのパジャマを脱いで服に着替え、パジャマは畳んでカゴに戻します。
乳児は担当のグループの子をゴザを敷いた上に集め一斉に着替えていました。
起きた後は、グループにはこだわらずやはりゴザの上で着替え、パジャマは一緒に畳んだり保育士がカゴに収めたりしていました。
今もそのようにしている保育園はありますか?
このパジャマに着替えることが、とてもとても大変な時間でありました。
文字で書けば2行で終わる出来事ですが、食べ終わる時間はバラバラなので着替える子について見守ることがなかなかできず、遠くから「早く着替えて」「ちゃんと畳んで」と声をかけていましたし、カゴを持ってどこかにふらふら行ってしまう子を追いかけたり、ふざけている子を叱ったりもしていました。
乳児にしても、一人で6人を一斉に着替えさせるのは時間もかかり、時間のない時は片っ端から保育士が着替えさせることも多かったように記憶しています。
心の中では着替えの時間が「嫌だなー」と思っていたのですが、パジャマを着ることは園で決められたことです。
◯それは本当に必要なことなのか
毎日「パジャマに着替える」ことと格闘していたある日、転勤してきたばかりの保育士が職員会で発言をしました。
『パジャマに着替えることは本当に必要でしょうか』
それを聞いていたみんなはびっくりしました。もちろん私もです。
パジャマを着ないなどという選択肢があるとは夢にも思わなかったからです。
発言した保育士が前にいた園では、話し合いの末パジャマを着なくなったそうで、転勤を機に今の園でもそのやり方を提案してきたのだそうです。
発言にびっくりした後は、話し合いの連続です。
私たちの保育が試される時がきたような気がしていました。
◯なぜ必要なのか
まずはなぜパジャマを着ているのかを考えることから始めました。
まだ新人同然の私は「そういえばなんでパジャマを着るんだろう?」と思いました。
「昼寝の前はパジャマに着替えます」と先輩に言われて始めたことなので、その意味など考えたこともありませんでした。
・寝るときはゆったりとした服が望ましい
・汚れた服で寝るのは汚い
・パジャマに着替えることで「ボタン」の練習ができたり着脱が上手くなる
・寝る前に落ち着いた時間が作れる
先輩たちからは様々な意見が出てきました。
パジャマは着た方がいいという考えの保育士は、ここで思考が止まってしまいます。
もしもそのような考え方の保育士が多かったとしたら、この話はここで終わっていたことでしょう。
しかしこの時はその先に話を進めることができました。
◯それを無くしたらどうなるのか
「ではパジャマを無くしたらどうなりますか?」
話し合いは次のステップに進んでいきます。
実際はここに辿り着くまで何回も職員会の時間を費やしました。
議題はそれだけではないので少しづつ話を積み重ねていったのです。
・ゆったりとした服がいいのでTシャツなど薄手の服に着替える
・食後汚れていなければそのまま寝られる。そもそも外遊びで汚れた時は食前に着替えているはず
・ボタンの服は少ないのでボタンの経験はできなくなる
・着替えない分絵本をゆっくり読める
話していくと「あれ?意外にもいけるんじゃない?」と言う雰囲気になり始めました。
一時はそのままパジャマ廃止になだれ込みそうだったのですが「ボタンの経験がなくなる」ことに難色を示す保育士が一定数いました。
この頃から「パジャマを廃止したい」考えの保育士からの意見が多くなってきます。
・ボタンは手作り遊具などを取り入れて遊びの中でゆったり取り組めばいい
・そもそも家で昼寝をするときにパジャマを着るのか?
・食後の時間をゆったり過ごしたい
たくさんの意見をやりとりした後、とうとう「パジャマはやめる」という結論になりました。
◯やめてみたら・・・
やめようという決定の後は保育士も子供たちも戸惑っていました。
今までしていたことをしなくなったので「え、本当に服で寝ていいの?」といった感じになりました。
しかしそれも数日のこと。
しばらくするとすっかり慣れて、食後の時間がゆったりと流れていきました。
以降転勤を繰り返しましたが、同じような経緯を経て、どの園でもパジャマは使用しなくなりました。
数年後には私から提案したこともあります。
寝ることに支障はありませんでしたし、保護者からのクレームも来ませんでした。
ルーティーンをやめる成功例と言えるかもしれません。
ただ一つ。
ボタンについてはどうだったかは、よくわかりません。
そもそも園でボタンの服を着る機会がなくなっていたので、ボタンがきちんと止められるかを確認できていなかったからです。
ボタン遊びも幼児クラスで十分にできていたかと問われれば、答えは「NO」です。
これは唯一残った反省点ですね。
◯見直してみよう
今回は私の「パジャマ」をやめた経験をお話ししました。
皆さんの園で、何か「やめたほうがいいもの」「やめても支障がないもの」はありますか?
いつもやっているから、園で決めたことだからと思いこんで続けていることはないでしょうか。
ルーティーンはスポーツ選手のように良い結果を生むこともあります。
しかしやめることで何かが良く変わることもあるはずです。
一度考えてみてくださいね。