あなたは笑わない赤ちゃんを見たことがありますか?
人見知り・・・ではなく、笑うことを知らない赤ちゃん。
なぜそんなことになってしまったのでしょうか。
笑わない赤ちゃんとの出会い
0歳児クラスの4月は全員新入園児です。
顔を真っ赤にして泣いている子もいれば、初めてみる保育士の顔を凝視している赤ちゃんもいます。
どの子も自分の感情を思い切り出して徐々に慣れていき、日に日に笑顔も増えていきます。
しかしMちゃんは違いました。
まず、一度も泣きませんでした。
お母さんの手から保育士の手に渡される時も表情は変わりませんでした。
初めは緊張しているのかとも考えましたが、泣くことも、笑うことも、ぐずることもしない姿に保育士は違和感を覚え始めます。
他の子とぶつかったりして痛い時は泣くこともありますが、おもちゃを取られても表情は変わりませんでした。
いつも同じ表情でいます。
担当の保育士は感情を引き出そうと、くすぐったり高い高いをしたりと色々な働きかけをしましたが、時々困ったような顔をする様子が見られました。
なぜ笑わないのだろう
クラスの担任は、みんなで「なぜ笑わないのだろう」と考えました。
みなさんならどう考えますか?
「障害」という言葉も浮かんでは消えていきました。
でも、担当の保育士は気がついていました。
「お母さんの笑った顔も見たことがない」と言うことにです。
結論を言うとMちゃんは、お母さんから「笑顔」をもらっていなかったのです。
赤ちゃんの笑顔
生まれたばかりの赤ちゃんが時折笑った顔になることを知っていますか?
生理的微笑と呼ばれ、赤ちゃんの気分とは関係なく顔の筋肉が動いて笑った表情を作っています。
この生理的微笑は、なぜ起こるのでしょうか。
医学的には、笑顔を見た両親が「かわいい」と感じて「世話をしたい」という気持ちを持つようになる為と言われています。
別名「天使の微笑み」と言われることからも、その微笑みが両親の心を掴んで離さないほどかわいいということがわかります。
この「生理的微笑」を受けた両親の笑顔を見て育ち、赤ちゃんは次第に感情を持って微笑むようになります。
私はこれを「笑顔のキャッチボール」だと考えています。
毎日笑顔を送りあっていく中で赤ちゃんは両親が大好きという感情を持ち、さらに安心感も持つようになります。
Mちゃんがもらえなかったもの
Mちゃんがもらえなかったものは、お母さんの笑顔です。
でもきっと、お母さんもその笑顔をもらわずに育ってきたのでしょう。
もらっていないものは、分け与えることができないのですね。
それに気がついた担当保育士はMちゃんに働きかけると同時に、お母さんにも声をかけ始めました。
「笑って」とは言わずに、お母さんとの信頼関係を深めようとしたのですね。
この先の話は残念ながらわかりません。
私が転勤してしまったからです。
でも、必ずこの対応は次のクラスへと引き継がれて行ったと思います。
そしてMちゃんは笑顔をもらえていると信じています。
あなたの周りに笑わない赤ちゃんはいますか?
いたら、一刻も早く動き出してくださいね。