「我慢の脳」で考える力を育てよう


年長くらいになると、集団で話を聞いたり
ある程度長い時間集中することが増えてきますね。

 以前見ていた年長クラスは一言でいうと、落ち着きのないクラスでした。

「静かにしましょう」「前を向いて」「イスをガタガタしないでね」
「自分の順番まできちんと待ちましょう」

口を開けば注意の言葉。
全体で話をしている時でも中断することがしょっちゅうありました。

 どうして落ち着かないのか

自分の指導のなにが足りないのか。
悩む日々が続きます。
クラスをよく観察してみると、少し見えてきたことがありました。

「つまんなーい」「めんどくさい」「早く好きなことして遊びたい」

(あれ?気持ちが持続しない子が多いかな?
途中で投げ出したり、楽なことを選んだりする子もいる。)

 「あ、我慢ができないんだ!」と気がつきました。

 集団で活動するということ

みんなで何かをするということは、
自分の思い通りにならないことが多くなるということです。
数人で旅行する時のことを想像してみてください。

それぞれのペースが違えば、待たされちゃったりすることもあります。
食べたい食事も多数決で時には譲る時もあります。
全てを思い通りにしたいなら、もう一人旅しかありませんよね。

 子どもたちは、少し我慢しなければいけない場面なのに
その時思うがままに行動していたのです。

他の子が話を聞いていても、おしゃべりしたくなったら話しかける。
みんなで何かを作っていても、飽きてきたら勝手に他のことをし始める。 

ちょっとの我慢ができていなかったのです。

 どうやって教える?我慢の仕方

「我慢しなさい」
と言い聞かせても、効果があるわけがありません。

どうしたら「我慢」ということを理解してもらえるかな?
色々考えますが、なかなかいい考えも浮かばず

色々な保育士に相談していました。
その時園の看護師にも相談を持ちかけました。

 「我慢の意味もわかってないし、我慢の仕方もわかっていない」
という私の声を聞いて一緒に考えてくれた看護師。

一つの提案をしてくれました。

 人間には「我慢の脳がある」

「動物ならみんなある「脳」だけど我慢ができるのは人間だよね。
「脳」に理性をつかさどる部分があるから、我慢ができるんだし。
それを教えたらどうかな?」

私は、看護師の提案に「やりましょう」と即答していました。

 そして考えた末に「看護師の先生の特別授業」を開くことにしました。

 「鳥の脳」と「人間の脳」

授業には看護師が手作りの教材を準備してくれました。
小さな鳥と、人間を紙で作り
頭の部分をめくると脳みそが見えるようになっていました。

 ここで伝えたことは

・鳥の脳みそには考えたり我慢したりするための脳みその場所がない
・人間には考える場所とそれを使って我慢する場所がちゃんとある
・鳥に「待って」とか「ここにいて」とか言ってもできないのは、
我慢の脳がないからである
・その代わり鳥の脳みそは空を飛ぶために必要な物がたくさん詰まっている
・人間の我慢の脳は「考える脳」を使うことで活躍する場所である

という内容でした。

 気をつけなければいけないのは
脳みそが大きいからいい、とか、小さいから悪いではなくて、
鳥には鳥の、人間には人間の脳の役割があると伝えることです。

また、「考える」ことで「我慢の脳」が働くということがわかるように
話すということも大切です。

 ぼくの頭にも我慢の脳があるんだよ

看護師の話を聞きながら、自分の頭を触ってみたり
白目を剥きながら上を向いて
なんとか自分の脳みそをのぞいて見ようとしたり

色々な反応がありました、
「みんなには我慢の脳みそがあるかな?」の問いかけに

どの子も「あるよー」と答えました。

さあ、この後からが本番です。

 使ってみよう「我慢の脳」

話が終わると、すぐ忘れてしまいがちですが
私は折に触れて「我慢の脳」という言葉を使うようにしました。

 「あっ、今すごくうるさくなった。
先生お話ができないよ。
今我慢の脳使ってなかったでしょ?」
ハッとする顔の子どもたち。

「じゃ我慢の脳を使ってみよう。
まず最初に考えるんだよね。今どうする時なのかなー」

「しずかにするー」

「そうだね、じゃ脳みそで考えるよ。
今は静かにする時だ。それからどうするの?」

「がまんののうをつかうー」

「はい、じゃ我慢の脳を使ってみて」

ーーーーーーーーーーーー

静まり返る子どもたち。
自分で意識して自分をコントロールしている瞬間です。

私は声を出さずに、びっくり顔で、音のない拍手をしました。

 考えることに意味がある

もちろん長くは続きません。
すぐにうるさくなったり、
ガタガタしたりといつものように戻ります。

でも、そのたびに「我慢の脳使ってみて」と働きかけました。
一度やり方を覚えているので、少しの間自分を抑えることができます。

 今はどうする時?

自分は何をすればいい?

みんなはどうしている?

ちょっと黙ってみよう

我慢してみよう

ぼくには我慢の脳があるんだから!!

 

実は我慢の脳に行き着くまでの
「考える」ことに意味があるのです。

「我慢の脳」はそれを引き出すためのパスワードのようなものです。

 考えるから成長できる

落ち着きがない、集中できない時、
子どもたちは考えることをストップしている時です。
ただ思うままに動いてばかりいては、
何かを吸収することはできません。

保育園の時代に考える力をつけることは、
この先小学校に上がり勉強をしていくのにも大切ですし、

何より人間関係にも大きく影響していくと思います。

 友達は、今どんな気持ちなんだろう。
その気持ちをぼくはどうやって受け止めたらいいんだろう。
そしてぼくは、自分の気持ちをどうやって伝えればいいんだろうか。 

我慢することを体験しながら、考える力をつけていく。
今静かにして欲しいという目先のことではなく
この先の成長にも目を向けて保育していく。 

保育士の働きかけがいかに大切かを、
改めて感じることができた特別授業でした。

 

※注意事項

我慢の脳の話の時に
トイレを我慢することや、
痛い辛い苦しいなど(身体も心も)を我慢することはしてはいけないと
必ず付け加えてくださいね。
泣きたい時に泣けないのはとても辛いものですからね。

 

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