『1~2歳児の発達とことば』に続き、発達とことばシリーズです
3歳児は、1・2歳児と違い、言葉が豊かになってきます。
たくさんの言葉を覚え始める時期ですよね。
そして、日本語には同じ音(おん)でありながら、違う意味の言葉がたくさんあります。
その違いの壁にぶつかるのが3歳児です。
セミはなぜ鳴くの?
子どもたちと園庭で遊んでいたときの出来事です。
私たちの園の園庭には木がたくさんあり、夏の晴れた日はセミがよく鳴いています。
保育士「今日はセミが鳴かないね~」
りょうすけ「今日はママといっしょなんだよ」
保育士「え?いつも鳴いてるのは、ママがいないからだったの?」
りょうすけ「そうだよ」
たくや「違うよ、夏だからだよ」
りょうすけくんは、“鳴く”を“泣く”と捉えていました。
まさに、同じ音で意味が違う、あるあるの言葉ですよね。
たくやくんの捉え方との違いから見ても、年齢的なものというより、その子の環境や感情が大きく関わっているように思います。
大切なのは、正解不正解はないということ。
3歳児なりに自分の経験と重ね、知識を引っ張り出して考えて会話しているのです。
りょうすけくんのお母さんは、お仕事が忙しくお迎えもギリギリになることが多い方。
普段は淋しいとは言わないりょうすけくんですが、ママがいないときにたくさん淋しい思いをしていたのだと思いました。
だから、セミが鳴くことについて、「ママがいないから泣く」と捉えているのです。
私たちは、子ども淋しさを知り、共感し、理解してあげることのできる保育士になりたいですね。
いい子ってどんな子?
3歳児クラスの男の子、けんたくん(3歳2ヶ月)、つばさくん(4歳3ヶ月)。
園庭で、けんたくんとつばさくんが汽車のおもちゃをつなげ、貨物のところに砂を入れて遊んでいました。
あれ?貨物の部分が一部壊れています。
けんた「ここ壊れてるよ」
保育士「そうだね、新しい汽車を買って欲しいね。誰に頼もうかな~?」
けんた「サンタさんに頼めばいいんだよ」
保育士「けんたくんは、欲しいものはサンタさんに頼むの?」
けんた「そうだよ。そうすると来るんだよ。でも、いい子にしないと来ないよ」
保育士「いい子ってどうすればいいの?」
けんた「・・・」
つばさ「あのね、お父さんとお母さんの言うこと聞くんだよ」
けんた「そうだよ!」
保育士「そうなの、私もいい子にしよう」
「誰に買ってもらおうかな~?」とつぶやくように言ったとき、園長か主任に報告して買ってもらうかと考えていた保育士。
まさか「サンタさん」と返ってくるとは思わず、思わず笑ってしまいました。
けんたくんの言葉を聞いて、お母さんがけんたに何かを「買って」と言われたときに何と返事をしているのかがわかりますね。
3歳児という年齢からいっても、まだまだファンタジーは通用します。
でも、そこには条件がついています。
それが「いい子にしていないと・・・」ということ。
けんたくんもつばさくんも、「お父さんとお母さんの言うことを聞く」ことと同じように思っています。
保育中「あ、いーけないんだー」と聞こえたときに、「ねえ、いい子ってどんな子なの?」と子どもたちに聞いてみたことがあります。
ある女の子は「寝る子だよ」と言いました。
「いーけないんだー」と言っていたこととは全く関係がありません。
これも生活の中で、親から言われていることから察しているのです。
機会があれば、「いい子ってどんな子?」と子どもたちに聞いてみてください。
「お父さんお母さんの言うことを聞く子」
「先生の言ううことを聞く子」
「寝る子」
「好き嫌いせず食べる子」
「一番になる子」
色々な答えがあるでしょう。
子どもたちの何気ない答えから、保護者の子どもとの関わり方が見えてきます。
まとめ
いかがでしたか?
3歳児さんは、言葉のバリエーションが増え、これまでもっていた感情を言葉にします。
お父さんお母さんとの会話が、子どもたちの言葉になって表れます。
普段の保育の場面、何気ない子どもたちの言葉の中にこそ、それが見つけられると思います。
その子どもと、保育士としてどう関わっていくのか。
そんなことを考えるきっかけにもなるかもしれませんね。
子どもたちの言葉に寄り添い、その気持ちに耳を傾けましょう。