先日ご紹介した「企業主導型保育所」。
導入する企業も保育園を運営する法人にとってもメリットが大きいように思いました。
しかし、保育園と立地のニーズが一致していなかったという記事が、新聞に掲載されていたのでご紹介します。
目次
企業主導型保育所の制度とは?
まず、企業主導型保育所がどのような制度かを改めてお話します。
企業主導型保育所は、企業が従業員の福利厚生を目的として設ける施設です。
保育士の数や定員などの要件が、認可保育所に比べると緩いので、設置しやすいのが特徴です。
政府が2016年度に、企業主導型保育所の整備と運営にかかる費用を認可保育所並みに補助する制度を設けました。
企業は整備費の4分の1、運営費の5%程度の負担で保育所を設置できます。
政府は2017年度末までに、企業主導型保育所だけで5万人分の受け皿確保を目指しています。
3割以上は待機児童ゼロの地域に開設
政府が待機児童対策の柱とする「企業主導型保育所」ですが、実は待機児童の多い都市部では導入が進んでいませんでした。
待機児童ゼロの地域に「企業主導型保育所」が新たに開設される、ミスマッチが起きていたのです。
設置が決まった約2万人分の保育所のうち、待機児童が集中している地域にできた保育所は、4割に留まっています。
そして、なんと3分の1近くが、待機児童ゼロの自治体に開設されています。
これでは、待機児童解消につなげるのは難しそうです。
なぜニーズのある地域に保育所が出来ないの?
それでは、なぜニーズの高い待機児童が多い地域に保育所を開設しないのでしょうか?
理由1:待機児童が多い地域=都市部だから
理由の一つは、待機児童が多い地域というのは、都市部に集中していることです。
東京23区などの都市部では、賃借料が高いため、国からの補助金だけでは運営出来ないことが多いです。
また、都心では人件費も高くなります。
保育士の給料を比較すると、青森県の平均月給が約19万円なのに対し、東京都は月給24万円です。
こうしたコストの問題があり、「企業主導型保育所」はニーズのある地域に設置しにくくなります。
理由2:従業員はオフィスより自宅近くの園に預けたい
企業主導型保育所は、定員の半数を従業員の子どもで満たすというルールがあります。
子どもといっしょに出勤して、企業の保育所に預ける。
仕事が終われば、すぐにお迎えにいける。
子どもの体調が悪くなった際など、すぐにお迎えにいける。
一見、理想的なように思えます。
しかし、従業員であるお母さんお父さんは、子どもを自宅近くの園に預けたいと話します。
都心での通勤には電車を使うからです。
満員電車で子どもを抱えて通勤するのは難しいというのが本音です。
つまり、企業主導型保育所を都心に設置しようと考えたとしても、実際に子どもを連れてくる従業員が見込めなければ、設置には至らないわけです。
待機児童ゼロ地域にできる保育所も需要ゼロではない
実は、待機児童ゼロの地域に出来る保育所も、需要がないわけではありません。
なぜなら、国や自治体が集計する数には表れていない「隠れ待機児童」がいるからです。
待機児童の数え方は、自治体によって異なります。
この隠れ待機児童や保育所に入るのを諦めていた子どもが、希望する保育所に通えるようになる可能性があるということです。
また、わざわざ遠くの保育園まで通っていた子どもが、より便利な場所の保育園に通うというケースもあります。
とはいえ、待機児童対策の柱としては、不足する点があることは否めません。
参考:2017年4月24日(月)日経新聞