保育士は子育ての経験や保育の資格をもつ女性にとって働き甲斐のある仕事です。もちろん経験も資格もなく働いている保育士さんもたくさんいますが、皆さん働き始めてから多くのやりがいを感じています。中でも主婦の方々には【パート保育士】としての働き方がおすすめです。「家事を優先させつつ働きたい」「子育てが落ち着いたため社会復帰したい」という方も多いのではないでしょうか。そのような方々には時間の利くパート保育士がピッタリです。ここでは、今後パート保育士になろうと考えている方や詳しくはわからないが興味があるという方々のために、パート保育士ならではのメリットや実際に生じ得る悩みもなどを紹介して参ります。主婦でない方も、是非ご参考にしていただければ幸いです。
1.パート保育士とは
求人情報で「パート・アルバイト募集!」という字面をよく見ますが、そもそも明確なパートの定義とは何なのか。また、保育士がパートで働くとはどういうことなのか。今までぼんやりしていた「パート保育士」の知識を明確にしていきましょう。
1-1.パート保育士とは
パート保育士とは、短時間勤務・時給制で雇用される保育士のことをいいます。
では保育士のアルバイトとは何が違うのでしょうか。そもそも「パート」は法的には厳密に決められた区分はありません。しかし世間一般では同じ短時間の時給制労働であるアルバイトとは区別して使っていますよね。そこには以下のような違いがあります。
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パートの保育士 |
アルバイトの保育士 |
主な労働者 |
主婦、定年退職者 |
学生、フリーター |
勤務期間 |
長期的 |
短期的、臨時的 |
勤務形態 |
正社員より短時間労働 |
正社員より短時間労働 |
またパート保育士の求人では「未経験者ok」「40代50代も歓迎」と掲げる保育園も多いです。そのためパート保育士は応募の際正社員よりも敷居が低く雇用されやすい傾向にあります。働き始めてからは、正社員とは違ってパートの場合一人ではなく正社員の保育士が一緒にいてくれる場合が多いでしょう。
ただし雇用形態が違えども子どもからしたらパートも正社員も関係ありません。どちらも「先生」です。責任を持って子どもと関わるという点は正規の保育士と一緒です。
1-2.保育士不足の現状
近年、そんなパート保育士における求人情報は年々増加しています。
なぜなら、20年近く続く待機児童の問題を解消するために国が保育所を増やしてきた分、保育士不足が深刻化しているからです。
保育士の数を確保するために、正社員と同じようにパートの保育士もかなり必要とされています。保育園の中にはパートにも補助金を支給するなどと新たな取り組みも始まっています。
そのため保育士の資格や子育て経験をお持ちでない方であってもパートであれば比較的雇用されやすいでしょう。採用される自信がなくて…という方もご心配なく、挑戦してみてはいかがでしょうか。
1-3. パート保育士として働くメリット
主婦の方でもそうでない方でも、パート保育士ならではのメリットがあります。
ご自身の境遇を重ねて考えてみましょう。
◆時間に余裕がもてる
自分のライフサイクルに合わせてシフトを組めるため、自分の時間を確保できます。ママさんであれば家事や育児とも両立しやすいですし、家庭をお持ちでない方も趣味や習い事でプライベートを充実させることが出来ます。
ママさんの場合、例えば子供の急病や学校行事など仕事よりも家庭のことを優先したいとき、パート保育士ならば時間の融通がききます。また1日3~4時間程度の勤務が可能なため家に帰って主婦の仕事もしっかりこなせるのです。
◆事務や残業などの負担がない
書類などの書き物が非常に多く保育士の中にはその点に不満を持つ方もたくさんいます。しかしパートとなると事務作業は少なく、同時に残業や時間外労働も減るのです。
事務作業にうんざりした正規職員がパートに転身するということもあるようです
◆扶養内で働くことができる
パートの方は夫の扶養に入っていたり子供がいたりと、家庭を持っている方が多いです。その場合主婦の方は月額10万8000円までは夫の扶養内で働けるという条件があります。
併せて「配偶者控除が受けられる」「源泉徴収をされない」など金銭的なメリットがあります。
◆ダブルワークができる
パートならば法的にも時間的にもダブルワークの縛りはありませんので、夜間や休日に他のアルバイトなどして稼ぐことも可能です。実際に、居酒屋やレジャー施設、ネットビジネスなど保育士と並行して働いている方もたくさんいます。
◆資格や経験を活かせる
保育園によっては無資格で働ける場合もありますが、資格を持っている方にとっては自分のスキルを活かして働くことのできるやりがいのある職場となります。
また子育てを経た方ならばオムツの交換や食事の世話など体に身についた経験を仕事場で最大限に生かすことが出来ます。子育て未経験の保育士さんと比べると、業務だけでなく心にも余裕が生まれること間違いありません。
1-4. パートとして働くデメリット
正社員や契約社員と比べると金銭面や休暇において劣る点がみられます。
◆稼げる上限がある
パートの場合基本的に時給制なため社員に比べると収入は下がります。
また会社の経営状況などによりシフトに入りにくく収入が上がらないといったこともあります。
◆有給をとりにくい
有給は法的には認められていますがとりにくい傾向にあります。有給申請する際は理由を言わなければいけない園も多く、スムーズに有給休暇をとれるとは言えません。また土曜午前中行事であった場合、本人の意思に関係なく午後は有給休暇となってしまうこともあります。
2.パート保育士の勤務内容
パートの保育士は具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。また勤務時間や待遇
は正規職員とどう異なるのでしょうか。比較しながら見ていきましょう。
2-1.勤務時間・日数
平均「週に3日」、「一日5時間程度」という方が多いです。しかし各保育園によって時間や日数の条件にはかなり差があります。
また時間帯に関しても早番・遅番のみの短時間勤務から、日中の保育に入るフルタイム勤務までさまざまです。もちろん短時間かフルタイムかは希望が出せますが、行事のための休日出勤なども場合によっては必要な園もあります。
先に述べた通り、パート保育士の残業や時間外労働は少ないため体力的・精神的負担も正社員より軽い傾向にあります。
2-2.仕事内容
基本的に担任保育士等の補助をしていきますが、勤務時間によって仕事内容は様々です。
◆長時間パートの場合
1か月あたりの勤務時間が約120時間以上の場合を指します。
正規職員と同じように、毎日の保育、個人記録や保育日誌などの書類作成、連絡帳記入、行事担当などの業務にあたることができ、クラスの主担任となることもある。
また運動会などの行事が土・日にある場合も出勤することになりますし、園によっては残業を要するところもあります。
◆短時間パートの場合
1か月あたりの勤務時間が約120時間に及ばない場合を指します。
正規職員の補助が主な業務で環境設定や教材準備、排泄や食事の補助、室内清掃などです。日常の保育の中では、集団行動についていきにくい子どもたちのフォローをすることもあります。書類作成などはないことが多く、主担任になることはありません。
◆早朝・夕方勤務(延長保育)の場合
ほとんどの保育園では昼間のようなクラス別ではなく全クラス合同で1部屋もしくは乳児+幼児の2部屋での保育になります。
子どもたちが室内で遊んでいる様子を見守っているのが仕事になりますが、朝は保護者もこれから出勤ですし、夕方の方がゆったりした雰囲気があります。共通する仕事は、保護者・保育園間の伝達事項の引き継ぎと子供の保育です。
◆土曜保育の場合
土曜保育を担当する場合も、子どもたちの安全を守って保育することがメインなので、何かを教えるという業務は基本的にはあまりありません。
2-3.待遇
◆時給
保育士パートの平均時給は、地方か都市部かなど様々な条件によっても異なってくるのですが、だいたい「時給800円~1200円」になります。
◆福利厚生
①社会保険:
健康保険・厚生年金保険は、勤務時間及び日数が正規職員の4分の3以上であれば、パートであっても被保険者とされます。
労働保険(雇用保険)は、週の勤務時間が20時間以上且つ1年以上雇用される見込みがある場合、パートも被保険者となります。
②ボーナス・休暇:
ボーナスや有給休暇、その他諸手当はパートの場合期待はできません。しかしこれも一概には言えず、例えば郊外のある私立保育園では各々の平均給与1ヶ月分を支払っているとのことです。地域のみならず各園によっても異なるかと思いますが、他の仕事のパートでの待遇とあまり差はありません。
3.パート保育士としての注意点
パート保育士は、雇用される園によって仕事の内容が変わってきます。採用のときに、どんな仕事をするのか良く聞いておく必要があります。では具体的にどのような点に注意すべきなのか、後悔しないよう考えていきましょう。
◆8時間以上(フルタイム)勤務を望む方
長時間勤務の場合、担任をもつことがあります。または担任補助にも関わらず事務作業や行事に向けての保育指導を任されることもあるので要注意です。なぜなら本来こういった仕事は正規職員がするものだからです。また仕事内容も多く、残業や土日勤務の可能性もあります。よって高時給だとしてもわりに合わないと感じる方もいるのです。
◆4~6時間勤務を望む方
8時間勤務よりは仕事量が減りますが、仕事の性格上時間ぴったり帰れることは少ないでしょう。とは言えフルタイム勤務よりは心身ともに負担は少ないため、保育未経験の方やブランクがあって不安な方は短い時間のパートからはじめると無理なく働けるでしょう。
◆早朝・夕方(延長保育)勤務を希望する方
保育の仕事を学びたいと思っている人にはあまり向きません。なぜなら、朝は子どもが増えていき夕方はだんだん少なくなっていく中で、基本的に子どもたちが室内で遊んでいる様子を見守っているのが仕事になります。そのため何かを教えるということはあまりありません。よって保育士免許を使ってアルバイトをしたい人や、年配の人に向いていると思います。
4.パート保育士が抱く悩み
上記の注意点を読んでみて、大変そうだな…体がついていけるかな…という意見もあったかと思います。しかし実際にパートの保育士が抱える悩みの種は、体力面以外にも存在します。その立場なりの悩みをみていきましょう。
◆保育補助のフリーで入るがうまくいかない
補助で入る場合やはり受け持つクラスが毎回異なるのでやり方も変わることや、短時間の場合他の保育士に上手くなじめないことなどから、うまくいかないことがあります。
◆結婚、出産後のブランクで自信喪失
結婚や出産をしてからパートを始める方が多い中で、やはりそのブランクが社会で働くことへの不安に繋がったり実際に保育園で働いていて指摘されたりすることもあるでしょう。以前保育士として働いていた方であってもそのようなことから段々自信を無くしてしまう場合もあります。
◆保育士として問われる責任は正社員と同じ
たとえば子供が怪我をしてしまったとき、関わった保育士ならばパートでも正規職員でも関係なく謝罪が必要となります。これは当たり前ではありますが、休日や閉園後など労働外での仕事もせざるを得ないため、その点でパート保育士としては不満に感じることもあるようです。
人間相手である上に子どもという非力な人を対象としているため、他の職場でのパートよりも責任は大きいです。
5.まとめ
いかがでしたか。雇用形態や勤務時間によってそれぞれメリットデメリットあるかと思います。パート保育士は人間関係や収入面においては折り合いをつけていく必要があります。しかし比較的時間に融通の利く働き方であるため、子育てが落ち着き資格を活かして働きたい方や、これから保育士として働いてみたい方は是非参考にしていただければ幸いです。