「今日お友達を噛んでしまいました」

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保育園でのトラブルで一番頭を悩ますのは「噛みつき」ではないでしょうか?
噛まれた子の親は怒り、噛んでしまった子の親は落ち込み…そして子を叱る。

もちろん噛んでしまったのは「保育士」が見ていなかったから(あるいは止められなかった)ですが、怒りの矛先は「噛んでしまった子の親」に向き、その親は子を叱ることになるのですね。

 

Rくんとお父さん

Rくんはニコニコとよく笑う子でしたが、気に入らないことがあるとものすごい速さで噛み付いてしまう子でした。
嚙む前の一騒ぎがないので、嚙むのを止める止めないの問題ではありませんでした。
もちろん親にも報告をしていきます。

ある日お父さんのお迎えの時に
「今日お友達を噛んでしまいました」
と報告しました。

それを聞くが早いかお父さんはRくんの手を乱暴に引き寄せて、なんと噛んだのです。
泣き叫ぶRくん。嚙むのをやめたお父さんは今度は怒鳴ります。
「嚙むなっていっただろ!噛まれたらこんなに痛いんだぞ」

慌てた私は
「お父さん噛まないで!保育士が止められなかったのが悪いんです」
と伝えました。
ちょっと強面のお父さんでしたので内心はドキドキでしたが、「お父さんが噛んだら絶対だめ」という気持ちを伝えました。
実際はしどろもどろでしたが、Rくんが噛んでしまうのは「やってやろう」という気持ちではなくて、本人も意識しないほどの行動なんだと思うということを伝えました。
お父さんが嚙むと、Rくんの意識の中にさらに「嚙む」という行為が染み付いてしまう、とも伝えました。

何しろお父さんの表情が怖くてよく覚えていませんが、多分聞いてくれていたのだと思います。
ここも曖昧ですが
「じゃあどうすればいいんだよ」
と聞かれました。
「お父さんのその優しさで、いっぱい遊んで、抱っこしてください」
と伝えました(こんなに格好良くは言えていません…多分)。

強面だけれどダイナミックに子供と触れ合うお父さんだということを知っていたから言えた言葉でした。

 

お父さんの変化

その出来事を見て、折に触れてお父さんの厳しい部分がそうやってRくんにもろにぶつかっていたことがわかりました。
厳しさは時にストレスになります。
おそらくですが、Rくんはそのストレスが重なっていた状態だったのでしょう。

しばらくするとRくんの噛みつきが減ったような気がしてきました。
そしてお迎えにきたお父さんが私に言いました。
「先生、あれから俺噛んでないからなー」

私は思わず
「お父さんありがとうございます」
と駆け寄っていました。
「先生、怒るのはいいんだろ?」
と尋ねるお父さん。
これを聞いて、あぁ本当にいいお父さんなんだなと思いました。

お父さんなりに模索していたんです。

「もちろんです。でも怒るというより叱ってくださいね」
と言うと
「何?違うの?」
と返されました。
「こわーく怒ると縮こまっちゃって話がよく聞けなくなるんですよ。だからできればお父さんも落ち着いてゆっくり叱ってください」
と言うと、
「あ、じゃー大丈夫だ。うちで一番怖いのはおかーちゃんだもんなー」
とRくんと笑っていました。

 

伝え方

この出来事で、私たち保育士の伝え方はどうだったのか考えるきっかけをもらいました。
「今日お友達を噛んでしまって」
と言う言葉は、おそらく親たちを追い詰めていたのだと思います。

このお父さんはたまたま私の前で噛んでくれましたが、これが家で繰り返されていたら?

噛まずとも叩いていたら?

怒鳴り続けていたら?

気がつくのがもっと遅くなっていたら、もっと大きな問題になっていたかもしれません。
その時に思いました。
必ず「解決策」を一緒に考える姿勢を見せなくてはいけないと。

あなたもきっと伝えている「今日お友達を噛んでしまいました」。
そのあと家庭でどんなことが起きているかまで、少しだけ気をかけて見てくださいね。

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