何故、潜在保育士が増えるのか


潜在保育士と社会の背景

現在、保育士資格を所有している方の中で、様々な原因から退職をされた方、または保育士として社会福祉施設で働いた経験のない方は「潜在保育士」というカテゴリーの中に入ります。

このカテゴリーの名前は、近年呼ばれ始めたものであり、その呼ばれ方の背景には、保育士資格を活用してほしい、現場で知識を活かして欲しい、という思いが込められています。

保育士資格は、国家試験を受けるか、または保育士養成校での単位を取得し、決められた実習期間を経て卒業と同時に取得することが可能です。
しかし、近年では、この潜在保育士が増加すること、そして、現場の人手不足の状況の悪化から、実習期間や取得する単位数が少なくても保育士資格を取得することができるようになってきました。

このような現在の保育を支える社会の仕組みは、潜在保育士を減らし、日本の保育を明るくしていくものなのかどうかを考えていきます。

 

調査結果から分かる現実

保育士を希望しない理由で最も多いのは、

「賃金が希望と合わない(47.5%)」

であり、

「他職種への興味(43.1%)」
「責任の重さ・事故への不安(40.0%)」
「自身の健康・体力への不安(39.1%)」

がこれに次いでいる。

なお、「自身の健康・体力への不安」は年齢と強い相関があり、50代以上では6割を越えている。
また、「賃金が希望と合わない」とする者は併せて「休暇が少ない・休暇がとりにくい」を挙げる割合が高くなっている(49.7%(全体37.0%)。

(中略)

「雇用形態が希望と合わない(10.0%)」、「有期雇用契約が更新されるか不安(4.8%)」はいずれも少ない。
また、「仕事の内容が合わない」とする者も9.2%にとどまっている。

厚生労働省職業安定局「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査」(2013年)

 

上記は、2013年に「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査」として男性、女性を合わせた958人に回答を頂いて得られた結果です。
このような結果が得られ、厚生労働省は、以下の対策を図っています。

①人材育成
保育士資格取得費用の支援、保育士養成施設に対する働きかけ・就職あっせん機能の強化

②就業継続
新人保育士を対象とした離職防止のための研修、保育士(新人保育士を含む)等を対象とした保育の質の向上のための研修

③再就職
保育士・保育所支援センターの活用、再就職前の実技研修、養成校を通じた卒業生に対する再就職支援

④働く職場の環境改善
保育士の処遇改善の実施、保育所の管理者等を対象とした雇用管理の研修、雇用管理の好事例集の収集・提供、仕事と家庭生活の両立支援に取り組む事業主を支援

⑤人材確保を支える取組

 

「潜在」を多様な視点から捉える

「潜在」という言葉は、表面にはっきりと表れないが、内部に密かに存在することを意味します。
つまり、誰にでもどんな時でも潜在的に眠る意識はあり、行動へ起こすまでに至るきっかけは必ずあるということです。

保育現場にいない方の潜在意識を探ることや支援をしていくことは大切なことではありますが、

私は、「現場にいる潜在保育士」を救うことが大切だと考えます。

いつか辞めようと考えている、限界を感じる、充実感を見出すことが難しい、その潜在的な思いを救っていける手段や施策を園に合うやり方で行っていくことが必要です。

辞めたい理由を話すことは難しくても、続けていこうと思う理由を語る時間はつくることができます。
一人ひとりで限界は異なっても、誰かと共有し、その限界の問題点を探ることもできます。

一人ひとりの現場での潜在意識へさらに焦点を当てて、具体的に改善して寄り添っていくことで、たとえ一度退職してしまったとしても、同じ意識を抱えずに前を向いて再度、新しい保育へ取り組んでみようと思うきっかけになるのではないのでしょうか。

 

現場での保育士の生き方

資格は、何のために生かされるものだろうか。と考えた時に浮かぶことは、専門的知識を携えて保育をする価値へと繋がり、やがて保育の質を高めるための礎になるという考えです。

しかし、保育士数の減少が叫ばれる中で、保育の質は資格と同等の価値ではなくなってきてしまっているように感じます。
資格があっても、続けられない、つまり、「生かされない資格」になってきているのでは、現場で生き生きと仕事をすることは難しいものです。

上記で厚生労働省が掲げる支援の中で、現場へ提供しているものは、大きく2つあります。

一つは、就業継続のための支援、もう一つは、働く職場環境の改善です。
どちらにも共通して行われている支援は、「研修」です。

現場での保育だけでなく、経験年数や役職に合わせた学びを得られる場所を提供している支援です。

しかし、この支援は、それぞれが受けて学んでいるだけでは、これから良くなっていくのかどうかの見通しがつかず、一方的な学びになってしまいがちです。

園長や主任が保育士をサポートするための知識や、コーディネーターとしての知識を得ることは経験に応じて大切なことですが、新人保育士や中堅保育士にとって大切なことは、年齢や役職に関わらず、学びたいことや悩みを常に発信し続けることです。
その思いを吸収してもらえる現場こそが、保育士が生き続けるためにふさわしい環境になります。

そのため、質の向上を目指す研修が増えていますが、まずは、園内で「保育の質とは何か」というものから考え始め、園としてどのように保育を高めていきたいのかを明確にしていくことが学びが生きる環境構成に繋がっていきます。

 

保育士が必要とする保育・社会の在り方の実現へ

保育現場の実態は、園が異なれば、方針や行っていることがそれぞれ異なります。
しかし、それは、他職種の企業や施設でも同じことが言えます。

厚生労働省でのアンケートから、賃金への不満が1番多い離職理由として挙げられていることが一番の問題であるとは考えられません。
それは、ほとんど同じ割合の方々が「他職種への興味」を挙げているからです。

保育業界の中だけでなく、他職種の「働き方」に目を向け、転職した方々が、何に魅力を感じ、その会社や業界と保育業界はどこが異なるのかを探り、「保育」が職業として社会に強く根を張っていけるようなものでなければなりません。
その一つの方法として「賃金」や「健康への不安」、「責任や自己への不安」といった問題の解消があるのです。

リスクや盲点が多くありますが、人間を育てるための保育業界を見直し構築していくことは、日本の人材育成として大きく発展する未来をつくっていくことに繋がります。

保育業界が保育士に求められる社会になっていくことが大切です。

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