保育士の仕事は、四月から三月を一区切りとしてクラスが変わっていきます。
四月担任になって何か問題が見つかると、どこか「今初めて関わる子だから、私のせいではないわ」と思ったりしませんか?
私のそんな失敗談です。
誰のせいなのか
私がまだ駆け出しの保育士の頃の話です。
食材を噛まずに丸呑みする子がいました。
2歳児の男の子です。
いくら「もぐもぐね」と声をかけても治らず、クラスの中では「お母さん、ちっともやってくれないから身につかないよね」と言っていました
職員会議で「Aくんは丸呑みが多いので困っています。家庭の食べさせ方も問題で…」のように報告していたら突然、園長からダメ出しをされてしまいました。
その年に転勤してきた園長です。
「Aくんは0歳から保育園にいるんでしょ?じゃあ、園での離乳食の指導はどうだったの?そこに問題はなかったの?家庭に問題があるような口ぶりだけど、離乳食を進めてきたのは園でもあるわけだよね?園には問題はなかったか前の担任に確認したり、記録を読み返したりしたの?」
私は言葉に詰まりました。
なぜなら、言われたことを何一つやっていなかったし、また考えもしなかったからです。
確かに自分の担当ですが、ちゃんと噛めないのは「家庭」のせいだと考えていました。
「咀嚼が上手くいかないな」と思っても、過去の成長の記録を紐解くことはしていませんでした。
問題行動=家庭の問題、と簡単に考えていたのです。
するべきこと
園長の言葉を受けて、早速「児童表」なる公式の成長記録を開きました。
そこで改めて気がつきます。
これは本来クラス担任として子供を迎える前に開くべきものだということに。
ただの口頭の引き継ぎだけで子供を理解したつもりでいましたが、それでは足りなかったのです。
0歳児の時は月齢で細かく記入していきますが、達成していないので空欄(あるいは特記がある)項目がとても多くありました。
つまり自分が担当時の月齢の部分を中心に見ているので、過ぎてしまった月齢の空欄(あるいは特記)を無視していたわけです。
これは私だけでなく、その前の担任もそうだったというわけです。
改めて先輩に指導を仰ぎました。
正しい記入の仕方
まずは発達を追って記入していく記録では、今の月齢を追いかけるのではなく「できるようになったのはいつなのか」を記入していくこと。
8ヶ月の子を見ていたとしても、「5ヶ月でできるはずのことが今できるようになった」としたら、5ヶ月のページに戻って書くということです。
ちょっと記憶が曖昧なのですが、それまで○で書いてしまっていたものを、何歳何ヶ月と記入するように言われたのもこの時だったと思います。
できているから○ではなくて、何歳何ヶ月にできたかが大事なのですから、今思うとなんて単純なことを理解していなかったのかと恥ずかしい限りです。
発達に対する働きかけ
これを踏まえて、勉強し直した私は、「食事の咀嚼が弱い子」の記録を見直しました。
どうやら前の担任もその前も。何歳何ヶ月の書き方をしていませんでした。
(25年前…全体で統一されていなかったのかもしれません)
でもそれぞれの項目を見ていくと、特記として書いてありました。
やはりどの月齢でも丸呑みの傾向が見られました。
ところが、その丸呑みに対してどのような対応をしていたかは書かれていませんでした。
その時は途方に暮れて先輩に助けられた記憶がかすかにありますが、そこから先は覚えていません。
今の私なら、こう考えます。
- 日々工夫していたが、記録に書くのを怠っていた。
- そもそも特記するような働きかけの工夫をしていなかった。
この2点をはっきりさせるには、日誌や指導計画を見直すか、直接保育士に尋ねるしかありません。
転勤や退職等で元担任がいなかったら、日誌等を見直しながら同じクラスだった保育士の聞くのもいいですね。
私たちの担任の仕事は一年単位で変わっていきますが、子供の発達に区切りなどは存在しません。
一日一日が流れるように過ぎていきます。
それを的確に記録していくことが、その先の子供の発達にとても重要になります。
どこかで発達のつまずきを見つけたならば、その前その前と記録をたどることができるからです。
今書いているその記録は、明日の、明後日の、1ヶ月後の、1年後の、場合によっては一年生になったあとにも必要なものなのです。
今一度みんなで記録の仕方を見直してみませんか?
私からの提案です。