保育者の意識改革について
「意識」ではなく「行動」を変える
園として大事にしたい視点を発信し共有することも大切です。
それは改まった講話よりも、日常会話や実践を通して保育者の実態に即して伝えた方が心に届くようです。
発信によって保育者の変容を促したいときは、意識ではなく行動を対象にするべきだと考えています。
「こういうふうに意識を変えなさい」という言葉はもっともなことも多いのですが、そう簡単に人の意識は変わりません。
それよりも、自ら行動を変えるようにする方が現実的です。
例えば、「子どもの育ちを保障しましょう」という考え方を伝えるのもいいのですが、それよりも、どのように行動したり考えたりすればよいかを具体的に共有することで、結果的にみんなが理念を実感できるというケースがよくあります。
行事に関する話し合いで、「どうしたら子どものよさが見えやすいだろうね」と、問いかける形で話し合い、具体的な行動の指針が共有されて実際によい成果が表れたら、「この方法はよかった。次もこうしてみよう」と考えるはずです。
そのように行動がよい方向に向かえば、結果的に意識も変わっていくものです。
園内環境を変えることで組織に繋がる
保育者同士が保育の質を高め合う組織にするためには、楽しく学び合える環境づくりも大切です。
ある保育所では、週1回、15 分間だけ、保育者が集まって、お茶を飲みながら、子どものよかった姿や保育の工夫などを伝え合う会を開いています。
短時間ですが、よい場面が共有できますし、自分の保育について話をする習慣ができるなど、大きな効果があるといいます。
特に若い保育者が、「自分の話したことを認めてもらえた」と感じて自信をつけているそうです。
こうしたグループワークを推奨すると、日頃から学び合う関係が生まれます。
例えば、休憩所にお茶やお菓子を置いておくだけでも、ゆっくりと話せる雰囲気が生まれ、保育者同士の交流が促されます。
「保育者がなかなか自分の考えを話さない」という悩みをもつ園長もいますが、少し環境を変えれば「話したい」という気持ちは生まれるものです。
信頼はお互いに、保育者を信頼しよう
これまでお話ししてきた3つの行動のベースとなるのが、園長と保育者の信頼関係です。これはどのように育めばよいのでしょうか。
まず園長自身が、「リーダーは立派でなければならない」という考え方から脱することが重要だと、私は考えています。
園長だって完璧な人間ではないのですから、自分の不安や心配事を保育者に話してみてはどうでしょうか。
若いときの失敗談などを話すのもよいでしょう。
そうすると、保育者との距離が、グンと縮まるのではないかと思います。
園長が雲の上のような存在であっては、保育者は何をするのにも尻込みしてしまいます。
そうではなく、同じように悩みをもち、努力をしている先輩としての側面を見せれば、コミュニケーションをとりやすくなり、それが信頼関係の基礎となります。
信頼関係を育みたいときは、まずは自分が相手を信じることも大切です。
信頼とは相互関係だからです。
誰でも「認められたい」「成長したい」といった気持ちをもっているものです。
そうした気持ちを刺激して伸ばすために、「なぜできないのか」と叱るのではなく、「本当はできるはず」「期待していますよ」といったメッセージを話の中に織り込むといいでしょう。
自分から相手を信じるには、覚悟が必要です。
もしかしたら、信頼して任せたことが裏目に出る場合もあるかもしれません。
それでも、みんなが育つ芽をもっていると信じ、相手を育てることを放棄しないことが、リーダーシップの大切な基本であることを忘れないでいただきたいと思います。
最後に、リーダーとして「最終的な責任は自分がとる」という姿勢を明確にすることも心がけていただきたいです。
「何かあっても園長がいてくれる」という安心感があるからこそ、保育者は自由にいきいきと保育に取り組むことができるのです。