気になる子。どうする?

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保育をしていく中で、「気になる子」は必ずいますよね。
なかなか歩かないなどの体の成長が気になる。
言葉が遅くて気になる。
集団に入れなくて気になる。
暴力的で気になる。
指示が理解できなくて気になる。 

あげていくときりがないほど、
保育士はたくさんの違和感を覚えていることがあります。

気になることが出てくると、私たちの頭の中には
様々なことが浮かんでは消えていきます。

「もしかして自閉症?」「それともADHD?
すぐにでも答えを出して対応を考えたいですよね。

しかし、気になる子に対しての働きかけを焦ってはいけません。
まず担当保育士は冷静に観察しましょう。

 大きな視点で見てみよう

まずはその子を大きな捉え方で見ていきます。
年齢的な発達を考えた時、まだ達していないのはどの部分?
集団活動のときにうまくいかずはみ出てしまうことは何?

この見方を【鳥の視点】と覚えてください。
高い空の上から街を見下ろすように見るので、
その子自身の個性や環境などはひとまず置いておきます。

単純に全体の中での子どもの姿を捉えていくのがポイントです。

ノートに箇条書きしてみてください。

 細部を細かく見ていこう

先ほど高い空を飛んでいましたが、
今度は蟻のようにあなた自身を小さく小さくしてください。

【蟻の視点】です。
その子のポケットに入ってしまうような気持ちで、
1日の姿を観察してください。

集団で話しが聞けないけど、隣のクラスの音が気になって立ち上がっちゃうんだなー。
言葉が出ないけど、話しかけてる保育士の顔も目も見ていないなー。
電車の本が好きで全部の名前が言えるけど、ストーリーのある本は見向きもしないなー。
歩けないけど、そもそもお座りも安定してないなー。腰が弱いのかな?

【鳥の視点】の箇条書きと関連付けながら記入していきましょう。

 情報を共有しよう

この時点で見えてきたのは、
「何が」気になっていたのかということです。

「なんか手がかかって心配なんだよねー、あー気になるー」
というところから一歩前進です。

複数担任であれば担任同士で、
幼児クラスは他クラスの担任にもその情報を伝えましょう。

職員会議で伝えるのも大切です。

「〇〇くんは歳児ですが、■■がまだ発達的にできていない姿があります。(鳥の視点)
具体的には~~する時にのようになります。(蟻の視点)
担任としては今このように対応していますが
今後もっと考えていきたいので、協力お願いします。」

これによって更に複数の視点で見守ることができますね。

 勝手に思い込まないで

このような時につい「自閉症っぽい」のような表現をしてしまうことがあります。
何を隠そう私がそうでした。

頭の中で知っている病名や症状名を当てはめてしまいたくなるのです。

でもこれはとても危険なことです。

私たちは医者でも心理士でもありません。
診断を下すことは絶対にできませんよね。
なのに思いついてしまった病名(症状名)を口にすると、
それに引きずられてしまうからです。

反応が薄いから自閉症だと思っていたら、
実は耳の聞こえが悪かったなどということが実際にあるので、
思い込みは絶対にやめましょう。

じゃあ、何もできないよーーと思ったあなた。

私たちは何のプロですか?
そう!

【保育のプロ】です。 

保育士ができること

保育士は診断ができないと前述しました。医療のプロではないからです。
では何ができますか?

保育のプロである私たちは、
その子の一番近くで様子を見、発達度合いを確認し、
関わりを持って変化を感じることができます。

そして何より集団で保育する経験を積む中で、「気になること」発見できるのです。
そしてそれを保護者に伝えることができるのも、また保育士の大切な役割ですね。

 伝える難しさを忘れないで

これらの話は、全て園長を通して行なっている前提とします。
発達に関わる話は、必ず園長に相談をし報告をし、指示を仰いでください。
それだけデリケートな話だからです。

私が新人の頃、園長に相談なしに
○○ちゃん言葉遅いから、言葉の教室行くといいですよ」
と保護者に言ってしまったことがあります。
(今書いていても背筋が凍ってしまいそうです。)

園長は私をこう叱りました
「先生は親の気持ちをどう考えてるの?」

この言葉は20年以上経った今でも私に刺さっています。

 伝えることから始めよう

私が使った「言葉が遅いから」
という表現は親の気持ちを無視したとても冷たい言葉です。

ではどうすればよかったのでしょうか。

この時言葉の教室に行って欲しいというのは園長が考えていたことです。
ですから、その話に持って行くために(本来は園長が伝えるはずでした)
言葉について心配しているということを、
担任から柔らかく伝える必要があります。

今の私ならきっとこう声をかけます。
○○ちゃんお友達といる時とっても嬉しそうにニコニコ聞いてますね。
おうちでもお母さんとかお姉ちゃんの話ニコニコ聞いてることが多いですか?
○○ちゃんから、聞いて聞いてってなることありますか?」

このポイントは、否定語を使わずに発声が少ないことを伝えつつ、
家庭での様子を聞くということです。

この時作り話(ニコニコしていないのに嬉しそうと言うなど)は絶対にしません。
この後はお母さんの答えを聞いて次の行動を考えます。

最終的には園長から「言葉の教室」がとてもいいから行って見てはどうかと勧めてもらうのです。
お母さんが「言われてみれば言葉が遅いかなー?」
と思うまで、様子を伝え続けるのです。

毎日子供と接する私たちの言葉です、必ず届いていくはずです。

また別のケースでは、医療機関につなげたいということもありますね。
私がいた園では心理士が巡回する仕組みがあったので
保護者に許可をとり園で「
IQテスト」を実施して、
心理士から受診を勧めることもありました。

これも、日々の様子を伝えているからこそ、
専門家に相談して見ませんか?と声をかけられるのです。
 

伝えてからがスタートです

色々なケースがありますが、受診して「自閉症」とわかるケースも少なくありませんでした。
療育にも通い始め、保育士も増員され一件落着
・・・ではありませんね。

保護者は子どものその診断を
この先ずっと抱えて歩いて行かなければならないのです。

保育士にとっては一区切りかもしれませんが、
保護者にとっては今までとは全く違うきつい坂道を
「さあ歩きなさい!」と言われているようなものです。

 心の変化には段階があります

「あなたのお子さんは自閉症です」と医師から告げられた後、
保護者はどのような気持ちの揺れを感じるのでしょうか。

1,ショックを受ける
(言葉を失ったと言う方もいます。ただただ呆然としてしまいます)

2,否認する
(いや、何かの間違いでしょ。うちの子がそんなわけありえない。
違う医師が見たら間
違いですって言ってくれるはず。違う違う。絶対違う)

3,悲しみ、怒り

(やっぱりそうなの?なんでうちの子なの?
これからどうするの?もう普通に暮らせ
ないの?嫌だ。どうして?
私悪いことなんかしてないのに。
保育園の指導が悪かったんだ。きっとそうよ)

4受け入れ
(泣いてもわめいてもこの子が自閉症っていうのは変わらない事実なんだ。
自閉症のこ
と勉強した方がいいかな。
病院の先生もなんかアドバイスくれてたな。)

5再出発
(よし
!私たちにできることを一つずつやろう。
実家にも話して協力してもらおう。
まだ
わからないことばっかりだけど、みんなで力を合わせて行こう)


ざっくりですがこのように心揺れながら受け入れていくと言われています。
私たち保育士はこの全ての段階を支えて行かなければなりません。
もしかしたら「怒り」の時期にその矛先が私たちに向くかもしれません。
「悲しみ」で心を閉ざしてしまうかもしれません。

そんな時に全ての保育士が共通理解を持つことによって、
保護者を支えたり、
あるいは、担任をサポートしたりできるようにしていきましょう。

私は失敗してしまった20年前に戻ることはできませんし、
傷つけてしまったお母さんがその後どうなったかを知る術もありません。
 

今現場に立つみなさんに、ぜひ深く考えて欲しいと思います。

「気になる子」で終わらせず
「気になること」を探し出し、いつの日かみんなが
「元気になる」ことを信じましょう。

 

 

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