あなたには、苦手な人がいますか?
あの人の言い方がきつくて怖い。
あの人は私を無視する。
あの人は私の悪口ばかり言っている。
あの人は私の保育の仕方が気に入らないと態度にでている。
できれば近寄りたくない、一緒に仕事がしたくないと思っても同じクラスの担任ともなれば、コミュニケーションを取らないわけにはいきませんよね。
クラスが違っても、厳しい先輩にいつも見られているような緊張感があったりもします。
何ができるかな?
人間関係の工夫を考えてみます。
厳しい先輩の目を気にして小さくなって保育している人いませんか?
ここで言う厳しい先輩とは、「言っていることはわかるけど、言い方厳しいし、いつも粗探しされてる感じがする」ような人のことです。
私にとっての厳しい先輩は、職員会で私のクラスに対していつも厳しい指摘を投げかけてきました。
大勢の会議の場では答えるだけで精一杯。
ちょっと違うなと思うことを言われても、言い返すなんてとてもできませんでした。
その先輩が遅番で会議に遅れて参加の時は、「戻ってくる前にクラスの報告を終わらせたい」と祈るばかりでした。
園庭で遊んでいる時もその先輩が気になって仕方がない。
なにを見られているのかが気になって、ガチガチの保育になってしまいました。
これではいけない、と言うより、「こんなの嫌だ~~」と強く思うようになりました。
飛び込んでしまえ!!!
厳しい先輩の目を気にする毎日にうんざりしていた私に、ある日チャンスがめぐってきました。
休憩時間にその先輩と2人きりになったのです。
(え?チャンス?ピンチでしょ?と思いましたか?まぁ、読んでみてください)
緊張感漂う中私から思い切って話しかけます。
「先生、職員会で○○の話になったじゃないですか(先輩が指摘したこと)
私は△△だと思って○○していたんですけどどの辺がおかしいですかねー?」
「あーあのこと?あなた、○○するのはおかしいでしょ?」
先輩はいつものトーンで話し始めます。
この時先輩の言い分をじっくり聞きます。
かなり辛くなるかもしれませんが、ふんふんなるほど、といった表情で聞き続けます。
この時の先輩の言葉を、のちに全て実行する必要はありません。
「先生はこう言うことを言っているんですね。私はこう思っていたんです。でも先生の考え方も参考にして次やってみます」と伝えるのです。
相手を否定しない、でもごまをすって合わせることもしない。
ここでの目標は先輩との距離を縮めることです。
先輩に気に入られるようにすることではありません。
一度2人で話ができると、次に顔を合わせた時にすんなり話せるようになるかもしれません。
「やってみたら、こうなった」と報告の形でもいいと思います。
恐れず、ちょっとでも言葉を交わすことが大切なんです。
その時はやってきた
なんとなく話せるようになってきた頃(まだまだ怖い先輩ですが)に、4月に向けての担任発表がありました。
私は5歳児担任、先輩は幼児クラスフリー。
つまり一人担任の私の事実上のパートナーになったのです。
「オォォ!ついにその時がきてしまった」
私の本音です。
でもそんなことで落ち込みませんよ。
早速色々チェックが入ります。
装飾の準備をしていた時、「ちょっと、何この切り方。もっと綺麗に切りなさいよ」
私の切った紙を見てお小言が始まりました。
さて、私はどうしたでしょうか?
泣いた?
怒った?
謝った?
ごまかした?
どれも違います。
正解は、切る仕事を全部先輩にやらせた。です!!
「先生。もしかして手先が器用で製作とかお好きですか?」
「好きも嫌いもこういうことは丁寧にしないと・・・」
と先輩が話し終わる前に、紙とはさみを渡し笑顔でこう言いました。
「先生はこちらを切ってください。私どんどん貼っていきますので。さあ頑張りましょうね。先生」
ちょっとポカーンとした先輩は笑いながら
「あなた結構あれねー」と作業を始めてくれました。(あれってなんでしょうね)
いや、心臓はドキドキでしたよ。
怒ったらどうしようとも思いました。
でもこれからパートナーになるんです。
遠慮していたら、私はこれから毎日何もできなくなってしまう。
そう思ったのです。
本当は怖くなかった先輩
それから二人三脚の毎日。
どんどん2人の距離も縮まり、幼児クラス担任で飲み会も開きました。
プライベートになるとますます話しができるようになり、先輩の本当の姿が見えてきました。
厳しいのは変わりませんが、それは思ったことがそのまま言葉になっているから。
裏と表がなくいつもまっすぐな人。
意見を言うときちんと聞いてくれる人。
実は楽しいことが大好きな人。
何より、良い保育のためにはどうしたらいいかをいつも考えている人。
次から次に見えてくる本当の姿はまさに、理想の保育士でありました。
歌がとても上手なこともわかり、私がピアノを弾いて子どもたちの前でコンサートもしました。
プライベートでは何度も一緒に飲みにいきました。
周りの同僚からは「ちょっと。怖くないの?」なんて言葉も聞かれましたが、
一緒に飲む仲間たちと「そんなこと全然ないよねー」と笑っていました。
ドアはノックしないと開かない
今回は、怖いと思い込んでいたら全く違ったというケースです。
もしも怖くて逃げ続けていたら、まだ怖い先生だったかもしれません。
あの時先輩の心のドアをノックしたからこそ、ものすごく大きく開けてくれたドアから、先輩の人となりがよく見えたのです。
この逆のことももちろんありますよね。
いい人だと思ったらどんでもなく陰口の多い人だったり、自分とは真逆の保育観だったり。
そんな時はいったん逃げたっていいんです。
逃げるが勝ちっていいますよね。
そして体制を整えてからまた挑んでいきましょう。
でもそれだって、相手に近づかなければわからないことです。
相手に対して先入観を持たずに、一歩近づいて自分の目と心で確かめる。
これが人間関係をうまく始める極意です。
いつだって信じるのは自分で感じたことであって欲しいと思います。
他人の噂ほど当てにならないものはありません。
「怖かった」先輩はもう退職されて、あちこち旅行されたことを年賀状で教えてくださいます。
大切な出会いを「怖い」という理由で潰してしまわなくてよかったと思います。
一度「先生最初すーごーく怖かったー」と告白したら、
「私黙ってられないからねー」と笑っていたのを思い出します。
子供達の前に笑顔で立てるように、素敵な仲間関係を築いていきましょうね。