子どもの【絵】は心の扉

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保育園で子どもたちは、お絵かきを楽しんでいますか?
どんな指導をしていますか?
今回は【お絵かき】の話です。

 

未満児のお絵かき

なぐり書きの時期ですね。
紙にクレヨンをトントンと叩きつけたり、ぐるぐると線を描いたり描く感覚を楽しむ時期です。

なぐり書きも、成長してくると紙からはみ出したり、壁に書いてしまったり親にとっては厄介な遊びになってしまうかもしれません。
でもこのなぐり描きが、心の成長にとって大切だということを知らなければなりません。

自由なぐるぐるの線は気持ちの発散です。
本当は動きを止めないでどこまでもぐるぐるしてもらいたいですね。

家では無理でも園では大きな紙に書くような体験もさせてあげましょう。
手先だけでなく腕も全部使ってのびのびと描く体験が、やがて自分を表現することにつながっていきます。

 

幼児のお絵かき

幼児になってくると、集団でお絵かきの時間を持つこともありますが、自由な時間にお絵かきをすることも増えてきます。
クレヨンだけでなく鉛筆やマジック絵の具など様々な画材も扱うようになります。
ここでは絵を描くことに対しての保育士の関わりが大切になってきます。

 

ある園の実例

絵画指導の研修で聞いた話です。
幼稚園で5歳児クラスが2つある園で、その講師が、ある日「ザリガニ」を描く課題を出しました。
それぞれのクラスで飼っているザリガニを見ながら描く方法です。

A組はベテランの先生。
大きな水槽からザリガニをそっと取り出し、各グループ用に小さい水槽に入れ替えてテーブルに配ります。
よく観察して描くことを知らせ、ハサミはどうなっているか、足は何本あるか、などを丁寧に語りかけていきます。
子どもたちは落ち着いてじっくり観察して描き続けました。

一方でB組は新人の先生。
緊張もあったのか、生き物が苦手なのか大きな水槽からザリガニを出そうとするのですが、怖くてなかなかつかめません。
子どもたちが見守る中やっとつかめたのですが、なんとザリガニが保育士の手を挟んでしまいました。
大声で叫ぶ保育士。あろうことか手を振り回してザリガニを外そうとします。

振り回されて、空を飛ぶザリガニ。
テーブルに落ちたザリガニにパニックになる子ども。
俺に任せろと立ち上がる男児たち。
いや、待って座って!と焦る保育士。

自分で取ろうとするもまた挟まれそうになり、大騒ぎ。
結局男の子が無事に水槽に入れたそうです。
そんな騒動のあとにやっと描き始めたB組。

 

さてそれぞれどんな絵が出来上がったと思いますか?

A組は、それはそれは美しいザリガニの絵が揃いました。
足の数もはさみもよく観察された絵だったそうです。

問題のB組は?
なんと、どの子のザリガニも、ハサミがとっても大きなザリガニに仕上がっていました。
それは今にも手を挟まれてしまうかのような迫力。
足の数はバラバラ、ハサミだけ書いている子もいたそうです。

この違いは何を意味しているでしょうか。

A組はしっかりとした指導で、よく観察することを知りました。
なので細部までしっかりかけましたよね。

ではB組の子達には何が起こったのでしょうか。
「先生が手を挟まれた!!」という驚き。ショック。
ザリガニが空を飛んで自分たちの前に落ちてきたハプニング。
落ちてなお先生を挟もうとするザリガニのハサミ。

それぞれの心に強いインパクトを与えて感情を揺さぶったわけです。
だから、皆、今にも挟んできそうなリアルなザリガニが生まれたんですね。

 

この話はどちらの指導が正しいのかということではありません。
あなたの好きな絵と私の好きな絵が違うように、この絵もどちらもいい絵なのです。

ただ、感情や心が動くと、それが素直に絵に現れるということがわかるエピソードですよね。
感情から生まれてくる絵に対して「そんな絵じゃおかしいね」「色が違うんじゃない?」「大きさが違うね」などの判定のような言葉をかけるのは全く持ってNGだということがわかりますよね。

B組の子達にとって、ザリガニのハサミは、先生が叫ぶほど大きくて強いものなんですから。

 

自由な発想

私はいつでも自由な気持ちで絵を描いて欲しいと思っています。
でも「みんなで運動会の絵を描こう」などと課題を与えることももちろんあります。

そんな時は「運動会でみんなが楽しかったこと、嬉しかったこと、頑張ったこと、びっくりしたことを、絵に描いて教えてくれる?」と問いかけます。
すると様々な絵が飛び出してきます。

みんなで経験した「運動会」ですが、感じたことはみんな違うはず。
運動会だけどお弁当のおにぎりの絵でも素敵ですよね。
毎回どんな絵が飛び出すか楽しみで仕方ありません。

 

うまい下手ではない

大人に近づけば近づくほど、自分の絵がうまいか下手かが気になってくるものです。
実際に絵のコンクールなどに出品されるのは上手に描くお友達でしたよね。

でも保育園時代は、とにかく「描くのが楽しい」と感じて欲しいと思います。
うまい下手ではなくて、「描いたこと」を認めてあげましょう。

またそれと同時に、描けないことも受け入れて欲しいのです。
描きたい気持ちに達していない時に「みんなの壁に貼るんだから早く描いてね」と言われても・・・
絵は描きたい気持ちが膨らんで弾けた時に描けるものなのですから。

なかなか絵に取り組めない子は、その気持ちに寄り添ってみましょう。
気持ちが落ち込む何かがあったかもしれません。
うまく描けない・・・なんて思っているかもしれません。

絵の、自由で楽しい世界が開けるような援助を考えてみてくださいね。

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