保育方針への戸惑い

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保育士や幼稚園教諭のバイブル、保育所保育指針・幼稚園教育要領(以下、保育指針・教育要領)。
これを読まずして現場に立たない人はいないかと思います。
私も短大時代に読み込みました。
内容や言葉もそれぞれ美しく適切で、日本で育つ子どもの姿や発達を主体に考えられたこのような保育内容は、どこの保育所や幼稚園でも適応されていると思っておられる方も多いのではないでしょうか。

すでに、現場で働いていらっしゃる先生達の中には、実際の保育指針や教育要領と現場の保育方針の差に違和感を感じている人も少なくないはずです。

今回はそんな保育方針に着目して、保育指針・教育要領で学んだ保育と実際の保育現場との差や戸惑いを、自身の経験からお伝えします。
さらに、戸惑いの中で持ち続けていただきたい保育観についても少しお話ししていきたいと思います。

 

眩しく見えた保育所保育指針と幼稚園教育要領

 〜各保育園、幼稚園で起こる解釈の違い〜

現場に立つ前は、学校や専門学校で保育所や幼稚園のあり方を保育指針や教育要領によって学習したことは皆さん同じだと思います。
全部読んだことはないという人でも、子どもの発達や健康、社会性など、生活のあらゆる保育の基本的概念を頭に叩き込んだはずです。

他方から見ると、理想的な保育を並べているだけとも言えるかもしれませんが、5領域の全てにおいて日本の子どもの成長に適切な目標が立てられています。

私も学生の頃、子どもがここに書いてある文言通りの環境で成長することができたら、子ども達は幸せだろうなと夢を抱き、保育現場にも期待を持ちました。

 

しかし、保育指針や教育要領は園によって解釈が違います。
特に公立園と私立園は、大きな差があると言えるでしょう。

一概に言うことはできませんが、公立園の方は保育指針や教育要領の内容に近い保育方針が立てられているところが多いと思います。
カリキュラムや行事も私立園と比べると、割とのびのびと自由であると言えるでしょう。

一方、私立園になると十園十色。

保育指針や幼教要領の中でも、各園の特色となるところをピンポイントに、園内目標をたてているところが多いかもしれません。
音楽や美術、教科別学習、スポーツ、自然、道徳などを中心とした保育をする保育所や幼稚園はたくさんあり、保育指針や教育要領の内容に反してはないものの、園によっては少し力を入れ過ぎていると思われるような園があることも実情です。

保護者や保育者、園の経営者の「子どものあり方」に対する考え方によって、たくさんの園が存在しているのです。

そのため、どの園が正しく、間違っているとは言えません。
ここは保育者として葛藤しなければいけない事ではありますが、保育者の方は客観的に園の方針を見て、実際に行われている保育をよく観察することが大切だと思います。

 

自身の戸惑い経験

〜私立幼稚園教現場から〜

私は短大を卒業してすぐ、私立の幼稚園に就職しました。

もっとも、自分の保育観など備わってなかった頃だったので、待遇の良さや環境で選んだ園でした。
私自身は、幼少期は公立保育所でのびのびとそだったので、私立幼稚園に通う子どものハードスケジュールに初めはびっくりしました。
更に、私が務めていた幼稚園は音楽と美術を特色にし、某教材会社が参入してお勉強の時間も多い幼稚園でした。
自由時間は朝の10分と昼食後の15分のみ。
あとは全てカリキュラムがぎっしり詰まり、行事も多いため、常に何かに追われているようなスケジュールでした。

それでも園の教育目標は「のびのび育つ元気な子」と謳っており、初めに持った園のイメージとはかなりかけ離れた保育内容で戸惑ったことを覚えています。

真っ白な1年目は、その園の色に染まるしかないと思い、一生懸命に園の方針や教育内容を飲み込もうとしていましたが、仕事に慣れ出した4年目くらいに、自分の保育観が確立しだし、違和感に耐えきれず退職しました。

 

初めての就職では自分に合った園を選ぶことは難しいかもしれませんが、仕事に慣れ出してきた頃になっても先生の仕事が辛かったり、子どもの接し方が理想的でないと思った場合は、他園への転職も考えても良いかもしれません。

一人一人の先生が自分らしく、子どもも子どもらしくいられることが一番と言えるでしょう。

 

それでもやっぱり保育指針と教育要領が基本

〜自分の保育観をもって〜

学生の皆さんや、保育現場で働いている先生は、自分の保育観はお持ちでしょうか?

こんな風に子どもの成長を育みたい、こんな保育をしたいと言う考えが自分の中にあれば、それはあなたの保育観です。

近年では、社会のニーズにあわせた保育施設、や外国の文化や流行の影響もあり、自由な保育スタイルがとられるようになっています。
そのため、保育者の皆さんにも、わりと自由な保育観を築いてもらいやすい時代なのかもしれません。

しかし、基本的には保育指針と教育要領を基本にして自分の保育観を広げていくことをお勧めします。

それは、自由で特色のある園が多いほど、本来の保育の目的や子どもの姿をないがしろにしやすいためです。

質の良い保育を行うには、「基本」が大切。
そこからたくさんのアイディアを発展させて、保育観を磨いていくことが、ステキな保育者としての大切なステップと言えるでしょう。

様々な園がある中で、戸惑うことも勉強の一つです。
戸惑う事を新たな発見として前向きにとらえることが、保育者として楽しく仕事を続けられる秘訣かもしれませんね。

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